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夏休み 3

「弟や妹に会うって、どんな気分?」 「……まぁ、突然出来た身内だから、どんな風に付き合っていったら良いかなってまだ迷ってる感じ。 お互い離れた所に住んでるし会ったこともないから、むこうも急に『兄貴だ』とか言いわれても、ピンと来ないだろうね。でも、俺はちょっと楽しみかな。大学生の良孝(よしたか)はミュージシャン目指してるとかで、妹の美弥子(みやこ)は高校の部活でダンスをやっているらしいんだよ。だからさ、もしかしたら、瞬との方が話が合うかも知れないなって思ってるんだ」  駅に向かうタクシーの中で、鷹人が嬉しそうに弟達の話を始めた。小さい頃に母親をなくした鷹人にとって、「家族」には特別な思いがあるんだろう。 子供の頃に得られなかった心の安らぎを、新しい家族を通して得られると良いな――俺は大好きな鷹人の横顔を見つめながらそう思っていた。 「瞬、どうかした? もうすぐ着くけど……」  しばらくすると、鷹人が俺の方を見て困ったような顔をした。鷹人が話し終わった後も、俺は黙ったまま鷹人の横顔を見つめていたようだ。 「あ、別に。なぁ、そう言えば、皆にお土産買った?」  俺は慌ててそう質問した。もしかしたら不自然なくらい見つめていたのかも……俺は視線を窓の外に向けた。 「うん、もちろん」  鷹人がそう言った後、カバンを軽く叩く音がした。 「さすが、鷹人」  俺がそう言うと、鷹人がクスっと笑った。  それから間もなく駅に着き、俺たちはタクシーを降りた。 「さ、行こう」  俺たちは二人並んで駅の中に入っていった。  こうやって普通に旅行するのなんて、いつ以来だろう? 何だかすごくワクワクしてきた。 ツアーの時に新幹線を使うこともあるけれど、マネージャーやスタッフやファンの人達の目があるから、ずっと「サーベルのシュン」でいないといけなくて、のんびり出来たことなんてない。まぁ、自分が好きで選んだ道だから、仕方ないんだけどさ。  新幹線に乗る前、駅弁を買うことにした。いろいろな駅弁を見て回っている間、俺は子供の頃に戻ったような気分になって、ワクワクが止まらなかった。食べてみたいのがたくさんあって迷ったけれど、かなり空腹だったってこともあり、3種類の駅弁を買って2人でシェアすることにした。  弁当を買った後、ホームに向かって歩いていると、時々、女の子たちが俺のことをジッと見てたり、すれ違った後、戻ってきてチラチラ俺の顔を確認しているカップルもいた。でも、俺は全然気付かないふりをして、鷹人と話を続けた。  今の俺は「サーベルのシュン」ではなく、澤井瞬。恋人と一緒にプライベートの時間を過ごしているところなんだ。

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