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夏休み 11
鷹人も眠ってしまったことだ、俺も少し眠っておこう、そう思い目を瞑った。だけど、妙に目が冴えてしまって全然眠れなかった。
しばらくの間、寝息をたてている鷹人の体に抱きついたりキスしたりしていたけれど、そんなことしいてたから、ますます頭も体も目覚めてしまった感じだ。
「チェッ。眠れないや」
俺は両手を頭の下で組み、白い天井を見上げていた。
隣に鷹人の体温を感じながら、しばら天井の模様を眺めていた。すると、廊下のむこうからサーベルの曲が微かに聞こえてきた。
「あ、そっか」
良孝が何か話があると言っていたと、鷹人から聞いていたことを思い出した。
どうせなら鷹人が眠っているうちに話を済ましてしまおう。鷹人が起きている間は、なるべく鷹人のそばにいたいからね――。
俺は眠っている鷹人の額にキスをしてからベッドを抜け出し、服を整えると部屋を出て良孝の部屋の前に向かった。
部屋の中から歌声が大きく聞こえ、俺はメチャメチャ恥ずかしかくなった。
コンコン――
ノックをすると、しばらくしてからドアが開き、良孝がぬーっと顔をだした。
「や……」
「あ、シュンさん! わ、あの、俺……」
ドアの前に居るのが俺だとわかった瞬間、良孝は目を大きく見開きながらアワアワし始めた。
「何か話があるんだよな?」
そう言うと、良孝が嬉しそうな顔をして、うんうんと何度も頷いた。
「そ、そうなんです。い、今いいですか?」
「うん。良いよ。たか……いや、渡辺君は寝ちゃったから」
さっさと話を済ませておきたいと思って……という真実は心の奥にしまっておこう。鷹人の弟ってことは、俺の弟でもあるんだ、面倒をみてやらないとね。
「ありがとうございます。あの、聞きたいこととかあって、俺の部屋で良いですか? ちょっと散らかってるんですけど――」
良孝がドアを開けながらそう言った。
床には雑誌やCDが無造作に積んであるのが見えた。スピーカーの前には、サチのギターと同じメーカーのギターが置いてあった。
「あぁ、良いよ」
俺が返事をすると、良孝はあわてて音楽のボリュームを下げ、床に散らばっていた雑誌や楽譜をベッドの上に片付けていた。
サーベルの曲じゃないほうが緊張しないんだけど――俺は心の中で呟いた。
部屋に入ると、天井に俺たちのポスターが貼ってあることがわかった。そして、壁には雑誌の切り抜きだろうか? サチの写真が何枚も貼ってあった。
俺はそれを眺めながら、女の子じゃなくても好きな芸能人の写真を貼るんだ……とぼんやり考えていた。親に見られるのが恥ずかしくて、ポスターとか貼ったことがなかったからな――。
部屋のあちこちにはサーベルが載った雑誌が所狭しと置かれていて、サーベルのCDはデビュー作から全てCDラックにきちんと並べられていた。ファンって本当に有難い――。
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