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夏休み 14
「あ、シュンさん。ありがとうございました。俺、感激です。一生忘れません……」
その声に慌てて鷹人の手を離して振り返ると、そこには真っ赤な顔をした良孝がいた。
そして目が合うと、「ありがとうございました」と何度も言いながら、俺の両手をギュッギュッと握った。
「どう致しまして。後は、キミの努力次第だからね」
喜んでもらえて良かったと思いながら良孝の手を握り返すと、鷹人が後ろから俺の腕をクイクイと引っ張った。いつもと様子が違う鷹人に、俺は戸惑ってしまった。
「わかりました。俺、頑張ります!」
役目を終えたスマホをポケットにしまっていると、良孝が感極まったような声でそう言ってから、俺の体にギュウギュウ抱きついてきた。
「うわ……あはは、わかったわかった。頑張れよ」
手を伸ばして良孝の頭をポンポンと叩くと、良孝がハッとしたように手を離し、俺を見てから照れくさそうに頭をかいた。
「は、はい……!」
俺の前で耳まで真っ赤になっている良孝を見て、そばにいた鷹人は複雑な表情をしていた。
「じゃ、また食事の時に」
早く鷹人と2人きりになりたくて、俺は良孝にそう言って部屋に戻ろうとした。
「あの、後……サチさんが、鷹人兄さんに伝言って。シュンさんは休み明け写真撮影があるから、跡とか傷? をつけるなとか何とか……って」
後ろから聞こえてきた良孝の声に、俺は苦笑いしながら鷹人を見上げた。すると、少し怖い顔をしていた鷹人が表情を崩し、俺を見つめてフッと笑った。
「あ……あはは。何言ってるんだろうなぁ、サチのやつ。じゃ、また後で」
俺はそう言いながら鷹人の背中を押し、2人で部屋に戻って行った。
鷹人の後をついて部屋に入りドアを閉めると、鷹人がクルッと振り向き、眉間にシワを寄せながら俺を見た。俺は鷹人のそんな様子に困ってしまい、首を傾げながら鷹人を見上げた。
すると次の瞬間、鷹人はその場に跪き俺の体に腕を回して甘えるように抱きついてきた。
「ど、どうしたのさ?」
俺の胸に頭をうずめたまま何も言わないのが気になり、俺は鷹人の頭を優しく撫でながら聞いた。
「何でもない……」
鷹人はギュッと抱きついてきて首を振った。
「何でもなくないだろ? 何かあるなら、ちゃんと言ってくれよ」
いつもは俺を包み込むように抱きしめてくる鷹人が、今は俺を見上げ道に迷った子供のような顔をしていた。
「笑わないでよ……瞬」
探るような目をしながら鷹人が言った。
「笑わないよ……」
俺が答えると、鷹人が俯いてハァと大きなため息をついた。
「俺……すっごく嫉妬した」
そう言った後、鷹人は俺の胸にもう一度顔をうずめた。
「え?」
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