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夏休み 15
「だって……俺、あんまり音楽に詳しくないからさ。良孝と瞬が楽しそうに音楽の話してるのが、羨ましかった」
しばらく黙っていた鷹人がボソボソと呟いた。俺は子供のように甘えてきた鷹人が愛しくて、思わずギュッと抱きしめていた。
「そっか……」
「わかってるんだよ、瞬の優しさだってことは……それなのに……」
鷹人が申し訳なさそうにそう言った。
「気にしないで。鷹人は、良孝に嫉妬してくれるくらい、俺のことが大好きなんだよね。俺も大好きだよ鷹人、だれにも負けないくらい大好き……愛してる」
俺がそう言いながら鷹人の背中をトントンと叩くと、鷹人が俺の体に回していた手を離し、頭をガシガシとかいた。
「はぁ……ちょっと複雑な気分だけど……何かホッとした」
俺は、照れたように笑った鷹人の頬を両手で包み込み、顔中にキスの雨を降らせてあげた。たまには鷹人に見上げられる感じも悪くないね。
そのまま俺は鷹人を抱きしめ、いつもと違う感じのキスをした。何だかそれはそれで興奮する。俺は男としての征服欲のようなものを久しぶりに感じていた。鷹人に愛される自分も好きだけれど、鷹人をリードするような愛しかたも良いかもしれないな――。
「そろそろ下りて来る? もうすぐ食事だよ」
鷹人とのキスに夢中になっていると、ドアの向うから声が聞こえてきた。美弥子ちゃんの声だった。
「わかった。今行くよ」
唇を離した鷹人が俺を見て微笑み、返事をしてから立ち上がった。
そして鷹人はいつものように俺の額にチュッとキスをした。すると、子供のように見えていた鷹人が大人の鷹人に戻っていた。
「鷹人、可愛かったよ」
小さい声で俺が囁くと、鷹人は、はにかむような笑顔を見せてから、もう一度キスをくれた。
居間に行くと、テーブルにはご馳走が並んでいた。
テレビを見ながら家族そろって夕食……こんな感じって何年ぶりだろう? 仕事関係で大人数で食事をすることはあるけれど、家族で食卓を囲む感じとは程遠いものだからな。
学生の頃もそうだったけれど、デビューしてからは、家で落ち着いて食事をする機会が極端に減ったので、母親には寂しい思いをさせてしまったのかもしれない。出来れば近いうちに、鷹人との関係を正直に両親に話そう――。
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