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夏休み 19
「東京に遊びに行ったら、また会って下さい。シュンさん……」
「あぁ、時間があったらね」
熱いなぁ……俺は笑顔を向けながら頷いた。
「はい。俺、絶対行きますから……」
そこまで言うと良孝が、また眠そうな顔をして大きな欠伸をした。目的は果たした……って感じなのかな。
俺は鷹人と顔を見合わせ、思わず苦笑してしまった。
良子さんが「ごめんなさいね、勝手な子で」と言いながら良孝の頭をクシャクシャと撫でた。
「二人とも、またいつでも遊びに来てちょうだいね」
良子さんが笑顔を向けて鷹人と俺を交互に見た。
「ありがとうございます」
鷹人がすぐに答えないので、俺は慌ててお礼を言った。
どうしたのかと思って隣を見ると、鷹人が照れたような顔をしながら、「ありがとう、母さん」と言った。
良子さんも鷹人もとても嬉しそうな顔をしてて、俺はその姿に感動してしまった。
子供の頃から母親を知らなかった鷹人にとって、良子さんはこれから特別な存在になるんだろうな――。
「出張でそっちに行くことがあるから、また寄らせてもらうよ」
親父さんがそう言って俺と鷹人の顔を交互に見た。
「はい。お待ちしてます」
俺達は鷹人の実家を出た後、3時過ぎくらいまで神戸の街を観光した。夜の景色も綺麗だとは聞いていたけれど、ライブの疲れも出てきたので、早めに家に帰ることにした。
新幹線に乗っている時から、俺は早く2人きりになりたくて、ソワソワしっぱなしだった。そんなこと言ったら、また鷹人に「瞬はイヤらしいからね……」なんて言われてしまいそうだから、黙っていたけれど……。
「瞬? 大人しいね」
窓から見える夕方の街をボンヤリ眺めていると、鷹人が声をかけてきた。
「ちょっと……ね」
「疲れたよね。ゴメンね」
鷹人が俺の顔を覗き込みながらそう言った。鷹人の香りが近寄ってきただけで、胸がドキドキしてくる。
「ううん。大丈夫だよ。そうじゃなくて……」
早く抱き合いたいんだよ……って言いたかったけれど、ここでは我慢だ。
「あ、もしかして、俺と同じこと考えてたりして?」
鷹人が声を落としてそう言った。
「同じこと?」
俺が聞くと、鷹人が俺の耳元に顔を寄せ「早くやりたいなって思ってた」と囁いた。その声が俺の下半身をすっかり元気にしてしまったので、俺は慌てて深呼吸を繰り返した。
「どうしたの?」
俺が困っているのを見て鷹人がクスッと笑った。
「もー。あのさぁ、今は刺激しないでくれる?」
俺はもう一度窓の外に視線を向け、脚をモジモジしながら呟いた。
「じゃあ、帰ったらいっぱいね」
時々鷹人はエロオヤジになるんだよな……心の中で呟きながら俺は「楽しみにしてる」って答えた。
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