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あいつがやって来た! 2

「あ、そうそう。サチは3時くらいに来るから」  俺は、ソファーに座ってキョロキョロと部屋の中を見回している青年に声をかけた。 「はい、ありがとうございます。まさかサチさんにまで会えるとは思ってなかったです、ホントすみません……。突然なのに……」 「いやいや。君が来る話したら、サチが自分から会おうって言ってくれたんだよ」  サチに話したことを後悔している自分がいるのも本当だ。ごめんよ、青年。 「ホント、まだ信じられないって言うか……、今も夢の中みたいだって言うか。……感謝感激です」  青年がソファーから立ち上がって頭をペコリと下げた。  この青年がなんとなく憎めなく思えるのは、良子さんの育て方がよかったからなんだろうな――。 「コーヒー入ったから置いとくな。俺は昼飯作るから、ちょっと待ってて。すぐに出来るよ」 「ありがとう……兄さん。実は腹ペコなんだ」  鷹人を兄さんと呼ぶこの青年、名前は渡辺良孝。彼は鷹人の父親が再婚した相手・良子さんの息子――だから彼は鷹人の弟になるわけなのだ。  2人で鷹人の両親に挨拶に行った時、「いつか東京に行きたい」と言っていた良孝だから、そのうち来るだろうと思っていたけれど……まさか、長期休みでもない平日に、突然来ることになるなんて思ってもいなかったよ。  良孝から鷹人に『東京に行くから出来れば会いたい』と連絡が届いたのは一昨日の夜だった。  鷹人からその話を聞いた時、『良孝に会うことになったけれど、瞬は休みなんだから無理に会わなくても大丈夫だよ』と言われた。鷹人らしい優しさだなと思った。  良孝が来ることは、鷹人と二人でのんびり過ごすと決め込んでいた俺にとって、正直嬉しくないニュースだった。だから、鷹人の言葉に甘えて1人でゆっくりしていようかと思った。  だけど……  鷹人と一緒に居られないんじゃ意味がない! と思った俺は「一緒に会うよ」と答えてしまったのだ。  そう言ってしまったこと、後悔していないと言えば嘘になる。だって、最近忙しくて、鷹人とイチャイチャしてないし、キスだって触れるようなカワイイやつしかしてなかったし――。  ってまぁ……鷹人と行動を共にしても、そこに良孝がいるんだったら、結局はキスも何も出来ないんだけどさ――  と、そう言う話は置いておいて。  鷹人の弟と言えば、パートナーの俺にとっても弟と言っていい存在だ。俺も兄として何かしてあげたい。  とは言え、良孝はまだ俺達の関係を知らないのだけど――。  幸いにも、俺たちの仲を鷹人の親父さんと良子さんは認めてくれた。だからといって、良孝が認めてくれるかはわからない。  良孝の妹の美弥子ちゃんには俺達の関係がバレてるから、そのうち良孝だって……。だから、良孝が間違った情報を耳にする前に、俺達からきちんと伝えておくべきだろう。  最近ちょうど、鷹人とそう話していたところだったのだ。だから、ちょうど良い機会だともいえる。  ただ、兄弟になりたての人物が同性と婚姻関係にあると知ったら、やっと落ち着いてきた家族の関係を壊すことにはならないだろうか?

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