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あいつがやって来た! 4

 そんなことがあって、今日は3時過ぎにサチがここに来ることになっていた。 サチは俺が心配するような話はしないと言っていたけれど、出来れば良孝とサチが合う前に、俺と鷹人の関係を話しておくようしよう、と鷹人と決めていたのだ――。  鷹人が作ってくれた昼食を食べた後、良孝は、鷹人の父さんと良子さんの話、自分のバンドの話など嬉しそうに話していた。 神戸に行った時は、ほぼ不機嫌な顔と、緊張した姿しか見せなかった良孝だったけれど、今回は普段の彼の姿を見せてくれたようだ。家に行った時も感じたけれど、音楽に対する熱い思いがヒシヒシと伝わってきた。 「あ、そう言えば、美弥子が瞬さんに会いたがってましたよ。瞬さん、髪型が変わったから、また一緒に写真をとりたいって……」 「写真かぁ……とったね、そう言えば」  俺がそう言うと、鷹人が「そうだったね」と笑顔を向けた。 「ずるいですよー、いつの間に写真撮ってたんですか? 俺も撮って欲しかったな」  そう言えば鷹人とのツーショットも写真をとらされたっけ……。 「あはは。あの時は、夜に美弥子ちゃんが部屋に来てね……。それじゃあ、後でサチが来たら一緒にとろうよ」 「サチさんとも撮りたいですけど……俺も瞬さんとも写りたいです。兄さんと撮った写真、恋人同士のプリクラみたいで、なんか可愛かったですよ……年上にカワイイって失礼かな…でもホントイイ感じでした」  恋人同士って言うか、夫婦みたいなもんなんだけどね――と、俺が思っていると、 「美弥子から写真見せてもらったの? 俺と瞬さんの写真……」  鷹人が俺の方をチラッと見てからそう聞いた。 「うん。。まぁ、勝手に見たって言うかんじ……」  良孝がそこまで言った時だった。鷹人がテーブルの上で組んでいた俺の手をポンと軽く叩いた。それが俺達のことを話すという合図なんだとわかった俺は、深呼吸を1つしてから鷹人の言葉を待った。 「あのな良孝、話の途中でわるいけど、お前に話しておかないといけないことがあるんだ」  鷹人の言葉を聞いて、良孝は一瞬緊張したような顔になった。 「え、話……って? もしかしたら、写真のことって内緒だった……とか?」 「いや、そうじゃないよ……」 「良かった……勝手に見たから、美弥子が怒っててさ」 「そりゃ、勝手に見たら怒るだろ?」  鷹人がそう言うと、良孝が身を乗り出した。 「だって、あいつ、俺のスマホ覗き見するんだよ、自分が先に見たくせに……」  そう言って良孝が、美弥子ちゃんとのいざこざの話を始めようとした。 「まぁ……それは、お互いにやめるようにするしかないんじゃない?」  話がそれてしまうといけないと思って、俺がそう言うと、良孝は素直に「瞬さんの言う通りなんですよね」と言って頭をかいた。

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