「じゃあ、話をもどすよ……」 　鷹人が真面目な顔でそう言うと、良孝は緊張したように「はい……」と返事をした。 「実は、俺と瞬は一緒に暮らしているんだよ」 　鷹人が意を決したようにそう言うと、良孝が急に目を輝かせた。 良孝は、「一緒に暮らしてる」をどういう意味で受け取ったのかな？ 「へぇ、そうなんですか？」 　良孝はキョトンとした顔をしていた。俺の家に住ませてもらっている程度に思っているのかも知れない。 「この間は話せなかったんだけどな」 「え、どうして？　瞬さんと一緒に住んでるなんて羨ましいけど……」 　良孝が感心したような顔をして鷹人を見た。 やはり、俺たちは同じマンションに住んでいるというだけで、2人が恋人同士だなんて思ってもないようだ。 「えっと……意味わかってくれてる？」 　鷹人は良孝の言葉の真意を確かめるように訊ねた。 「意味、え？　瞬さんとルームシェアしている意味……？　あ、もしかして、鷹人兄さん……お金に困ってるとか……だから、父さんたちにも話せなかったのか――」 　そう言った後、良考はまずいことを言ってしまった……というような顔をした。 「いや、そうじゃないよ」 　鷹人が困ったような笑顔を向けた。 「あ、良かった……父さんたちに言わないでいられる自信がなかったんだ」 　そう言い終わると良孝は、「ふぅ」と安堵のため息をついてからコーヒーを一口飲んだ。　 「えーと、そうだな……。単刀直入に言うと、瞬と俺は、婚姻関係にあるんだよ」 　良孝がカップをテーブルに置くのを待って、鷹人が話を再開した。 「コンインカンケイ？」　 　鷹人の言葉を聞いた良孝は、そう言った後、しばらく黙り込んでしまった。 「ゴメン、良孝君。俺が君の兄さんを、普通の道から外れさせたんだ」 　黙って首をかしげている良孝を見ているうちに、俺はいたたまれなくなってしまった。 「そういう言い方はやめてよ、瞬が悪いわけじゃないんだから」 　鷹人が少し怒ったような声で言った。 「でも……」 　俺がうつむいたまま呟くと、鷹人が俺の両肩に手を置き、俺の体をグッと自分の方に向けた。 「俺は普通だよ、瞬だってそうだ。男と女だけが恋に落ちるわけじゃない。そうでしょ？」 　鷹人の真剣な声が少し怖いように思えて、俺は顔をあげる事が出来なかった。 「……でも、やっぱり普通に恋愛している人から見ると、おかしいんじゃないかと思えてさ」 　そう言って顔をあげると、鷹人が悲しそうな目をして俺を見つめていた。 「瞬……そんなこと思ってたの？」 　俺は鷹人の顔を見ていることが出来ず、再び視線を下げた。 　いつもは考えないようにしていたことが頭の中に浮かんでしまうのは、自分達だけの空間に他の人が入って来たことで見えてしまった「現実」なんだと思う――。 「普段は考えてないよ。ただ……時々、鷹人に悪かったのかもって思うことがあるんだ」 　不安に思いながら顔を上げると、良孝が俺達を見て困ったような顔をしていることに気がついた――。