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あいつがやって来た! 11
「それと、これは美弥子から」
小さな可愛らしい包みを出しながら良孝が言った。
「へぇ、なんだろう?」
鷹人が、俺達にプレゼントするには可愛すぎる包を眺めながら首をかしげていた。
「多分、写真立てだと思うよ」
良孝がそう言って笑った。
「じゃ、写真入りかもね」
俺がそういうと良孝が「俺もそう思う」と言ってクスクス笑った。
「ありがとな、良考。俺らからも連絡も入れておくけど、帰ったらみんなによろしく伝えておいてよ」
鷹人が美弥子ちゃんからのお土産を受け取りながら言った。
「うん、わかった」
それから良孝はサチに急かされるように荷物をまとめなおし、出かける準備を始めた。
「サチ、次の予定って、やっぱり仕事じゃなかったんだな」
俺は玄関先で、良孝が靴を履き終わるのを待っていたサチに声をかけた。
「あはは。お前だってわかってただろ?」
サチがパチンとウインクしてから言った。「わかってた」ってこともバレているわけか……お互いのことがわかるほど長い付き合いになったんだよな。
「まぁね。じゃあ、良孝くんのこと、よろしく頼むよ」
サチと進藤君が、俺達の為にかげで苦労してくれていた頃の事をボンヤリ思い出しながら言った。
「お世話かけます」
隣で鷹人が頭を下げたので、俺も慌ててサチに向かってペコリと頭を下げた。すると、頭上からサチのクスッという笑い声が聞こえてきた。
「任せておけって。これで2人きりになれるだろ?」
サチがニヤニヤしながらそう言った。くつを履き終わりサチの隣にならんだ良孝が、困ったような笑顔を向けていた。
「何言ってんだよ……」
「顔がニヤケてるって」
「あほか」
俺達のかけあいを見て良孝が「サチさんと瞬さんって、仲良いんですね」と笑った。
「まぁね。でも瞬は俺の好みじゃないからね」
「俺だって……」
そう言いかけて俺は慌てて言葉を飲み込んだ。今日俺と鷹人の関係を知ったばかりの良孝に、こういう会話は早すぎるのかもと思ったのだけど――。
「瞬さんは鷹人兄さんが好みなんですよね」
良孝が深く頷いてから、優しく微笑んだ。その笑顔は良子さんの笑顔とそっくりだと思った。
俺は鷹人の顔を見上げてから、良孝の方を向き力強く頷いた。
こうして良孝の訪問は慌ただしく終ったのだった。
本当の用事は何だったんだろう? 先輩の所に行くって言ってたけど……まあ、それは考えなくてもいいか……。
その後、部屋を片付けてから、俺達は2人の暮らしているマンションに戻ることにした。
「美弥子ちゃんのプレゼント、開けてみるね」
マンションに戻ってからすぐ、鷹人が総菜の入ったタッパーやその他の食品類を片付け始めた。
(キッチンを整理してくれるのは、いつも鷹人なのだ……どうやら俺には任せられないと思っているらしい……)
その間、俺は美弥子ちゃんからのプレゼントを開けることにした。
子供向けのキャラクターの絵がついた包み紙を開けると、思っていた以上にオシャレなガラスの写真立てが出てきた。
写真立てには、予想していた通り、俺と鷹人の写真が入っていた。俺達が気づかないうちに美弥子ちゃんが写していたようで、神戸の家の居間で、2人で何やら話し込んでいる瞬間を、とらえたものだった。
『鷹人兄さん、瞬兄さんへ。すごく自然で、愛があふれてるなーって思った写真をプレゼント。家族になれて超ラッキー!そしてすごくすごく嬉しいよ。いつまでも素敵な2人で居てね。 今度私も遊びに行くからね。 美弥子』
メッセージカードにはそう書いてあった。
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