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第4話

 忘れていたわけではないが、この男は外道・オブ・外道。  この世の中のありとあらゆる負の存在が一人の人間の形をとったのが黒崎芳秀という男である。  征一郎は思った。  この男に……こいつを任せておいたらどうなるかわかったもんじゃねえ……! 「こいつの……名前は……」  絞り出したような声に、わかっていたとでもいうように芳秀はニヤリとした。 「もうすっかり情が移っちまって」 「うるせえ!なんか文句あんのか」  掌の上で転がされていることはわかっているが、それでも通さなくてはならない筋というものがある。  目の前の小さな命が蹂躙されることを、征一郎の義侠心が許さなかった。 「そいつの名前は『ちび』だ」   「…………なんだその明らかに犬猫的なネーミング」  どんな名前ならよかったかと聞かれると微妙なところだが。 「諸事情によりもっと大人な外見に作りたかったんだが、思ったよりも大きくならなくてな」  見た目でそのまま呼んでいるということらしい。  ちらりと『ちび』に目をやるが、特にこのやりとりに不満を抱いている様子もない。  目が合うと、嬉しそうににこにこする。  頭を撫でてやりたくなるようななつっこさだ。  芳秀がビシッと親指を立てる。 「だが安心しろ。設定上は大人だからな!夜のお楽しみ機能もついてるから思う存分楽しめ!」 「何が大丈夫なのか一つもわからねえ!」  またしても非人道的な言葉が飛び出し、征一郎は怒鳴り返した。 「このド外道!何が夜のお楽しみだ!こいつは野郎だろうが!言っとくが俺は変態のあんたと違って、こんなガキには欠片も興味ねえからな!」  ・・・・・・・・  言い放った次の瞬間、見上げている瞳がじわりと潤んだ。  焦る征一郎に、芳秀が煙を吐き出しながら一言。 「お前……生まれつきの形状はどうにもなんねーのによく本人の前でそんなひどいことを……」 「お、俺か!?俺なのか!?違ッ……俺は別にお前を否定したんじゃ…!」  一切そんなつもりはなかった。  かばったつもりが泣かれて激しく狼狽える。  というか、通常の神経ならばこの少年も征一郎と同じように思うはずではないのか。そんなに俺が悪いのか。  人類最強を謳われる極道も、涙の前では無力だった。

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