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第30話
■都内某所 征一郎宅 リビング
「それで?どうすればベストな供給方法なんだ?ちゃんと言え」
とにかく、急いでそのエネルギー補給とやらをしなくてはならない。
急ぎ自宅に戻り、横になるかと問うと、大丈夫だと言うのでひとまず話を聞こうとソファに降ろした。
征一郎はその正面に膝をつくと、小さな偽りも見逃さないように少年を見据える。
ちびは視線を泳がせ、力なく首を振った。
「せ、征一郎…。おれ、無理してほしいわけじゃ…」
「あのな」
ちびがこんなに遠慮するのは、征一郎が初めに拒んだせいだ。
ここは真摯に、言葉を尽くさなければならないだろう。
「お前が欲しいのと同じ気持ちかはわかんねえが、俺もお前が大切なんだよ。親父に任せたくねえって思うほどにはな」
ちびが征一郎を慕う気持ちは、芳秀の陰謀で誘導されたものかもしれない。
征一郎が芳秀による『エネルギー補給』……精液の供給に憤りを感じたのも、ちびの男を惹き付けるという体質?による錯覚である可能性もある。
だが、今は互いの気持ちを確かめるだけの時間はない。
もたもたしていたら、この少年の命は失われてしまうのかもしれないのだ。
ならば、それがどんな行為だったにしても、征一郎にためらいはなかった。
ただ……一つだけ懸念事項がある。
それを聞くのは少し勇気がいったが、どうしても事前に確かめておかなければならないことだった。
「それより、お前こそ俺でいいのか……?今朝……触るなって……」
「あっ…あれは…!」
更に触るなと言われていたのに、抱き上げて実家まで往復してしまった。
遠慮しているように見えるちびの態度は、実は本当に征一郎を拒絶していて、あのまま芳秀に供給を受けることを望んでいたのでは……。
征一郎は、アニマルの気持ちを察するのは得意でも、年頃の繊細な心の機微などには疎い自信がある。
気付かぬうちにやらかしてしまっていたのではと青ざめたが、ちびは慌てて「ちがう」と否定した。
「あの時は、征一郎に優しくしてもらったら襲いそうだったから…!」
まさか、気付かぬうちにそんな危険にさらされていたとは。
大きな声で酷いことを言ってごめんなさい、と謝られて、少なくない安堵を覚えつつ苦笑した。
襲われたところでどうにかなってたとも思えないが、とにかく切羽詰まっていたらしい。
「征一郎……じゃあ、ほ…本当にいいの?」
「ああ、襲っていいぞ」
先程の発言を冗談めかして引用すると、ちびは微かに微笑んだ。
それじゃあ、とソファに座るように言われて、素直に従う。
入れ替わりにちびは床に降り、緊張の面持ちで足の間へと移動してきた。
「お前がすんのか。体…大丈夫か?」
何となくやろうとしていることを察して、具合が悪いのに大変な作業ではないかと気遣うが、「大丈夫」と首を振ったちびは、何故かおもむろに合掌した。
「いっ…いただきます!」
股間に向かって手を合わせられる日が来るとは思わなかったぜ……。
思わず遠くを見つめてしまった。
その間にも、ちびが緊張のせいか震える指をベルトに伸ばしてくる。
勃たなかったら……という心配は、あまりしていなかった。
ただ、長引くとちびの負担になりそうなので、その場合、どうフィニッシュするのがいいのかは少し考えておかなくては……、
などと、悠長にしていられたのは本当に最初のうちだけだった。
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