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第69話

■都内某所 征一郎宅  そのまま船神組事務所まで車を返しに行ってくれるという真人に礼を言い、地下駐車場に降り立った。  ちびを抱えたままエレベーターで十三階に上り、玄関の扉が閉めると、ようやく二人きりだとほっとする。  ちびがホムンクルスだということは誰も知らない。(月華あたりは芳秀から聞いているかもしれないが)  征一郎の頭がおかしいとかいわれるくらいならいいが、芳秀謹製のホムンクルスとして興味を持たれるのは困る。  絡まれるネタを作らないため、二人きりになるまでちびに現在の体調を問うことはできないかったのだ。  寝室に直行し、ぐったりとした身体をベッドに寝かせると、置いていかれると思ったのか。小さな手が懸命に縋ってくる。 「服脱ぐだけだ。どこにも行かねえから、ちょっと離してくれ」  優しく諭してやると、ちびが恐る恐る手を離した。  それでも焦点の合わない瞳が、心細そうに見上げてくる。  手早く服を脱ぎ捨てるとすぐに寝台に上がって、覆いかぶさり唇を重ねた。  差し入れた舌にちゅうっと強く吸い付かれて、ゾクリとする。  コクンと小さく喉を鳴らし、二人分の唾液を飲み込んだちびの顔には、少し血の気が戻ったような気がした。  もしかして、精液以外の体液も代替になるのだろうか。  欲しがり吸い付いてくる舌に、いっそう応えた。  弱った小さな体にのし掛かる罪悪感と背徳感。  まとわりついていただけの衣服を剥ぎ取り、もう一度怪我がないかどうかを確認する。  拘束の痕などがないのは、ちびが暴れなかったからだろう。 「奴等に捕まったときから、具合が悪くなってたか?」  問いかけると、反応は薄かったがちびは首を横に振った。 「あの部屋で……からだ……触られてから……」  急激に体調が悪化するほどのストレスを与えた樋口達に対し、改めて怒りが込み上げてくる。  もちろんそこには、無関係の少年を巻き込み性的な暴行を加えた相手への胸糞の悪さの他に、愛する者に手を出されたという憤りも多く含まれていて、怒っていたことを思い出してしまうと、今からでも暴れにいきたくなった。 「せいいちろう……」  負の感情を育ててしまったのを敏感に感じ取ったのか、ちびが不安そうな声で呼ぶ。 「悪い。どこにもいかねえよ」  意識を逸らしたことを謝り、怒りをしまい込んで再び唇を合わせる。  至近の瞳がほっと緩んで、待ちきれないというように征一郎のものよりも小さな舌が絡みついてきた。  しばらく飽きずに征一郎の舌を吸っていたちびは、そっと顔を離すと息を乱したまま懸命に見上げてくる。 「征一郎……、ほしい、」 「ここに、出していいのか?」  そろりと腹を撫でると、薄いそこはひくりと震えた。 「うん、征一郎ので、なか、いっぱいにして……」

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