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第4話
その後も、私は晃明先輩を想いつつ、先輩との時間を大切に過ごしていた。
合宿の時に先輩と撮っていただいた写真は私にとって宝物となり、財布に入れて常に持ち歩いていた。
教師になって先輩と一緒に働く事、その為には周囲を納得させられるだけの能力を持つ事が私の将来の夢になっていた。
水泳部の活動にも力を注ぎ、大会では必ず上位に入るよう努力していた。
晃明先輩も成績は常に学年主席、大会での成績も常に上位で、私にとって先輩は目標でもあった。
夏の大会を終え、次の大会に向けて調整していくというところで、私と晃明先輩は国際大会の日本代表の選手として選出され、強化合宿に行く事になった。
先輩とふたり、2週間もずっと一緒にいられるという、幸せであり理性との戦いの日々になりそうだった。
「おー!めっちゃいい眺め!!」
ホテルは2人部屋。
先輩とふたりきりという事を、私はあまり意識しないようにした。
「ヨシ、こっち見ろよ!!海も見えるぞ!!」
「そうですね…」
先輩はいつもと変わらない無邪気な笑顔を、他校から来ていたライバル達にも振りまいていた。
自分以外は敵という重々しい空気を、先輩がその笑顔で打ち消して和やかな空気にしていた。
「ここの露天風呂もイイらしいから、後で行こうな!!」
「はい、楽しみですね…」
この笑顔が私だけに向けられたら…と思う時もある。
だが、それはできない。
しようとして、先輩を失いたくない。
先輩に嫌われたくない。
その思いが私を繋ぎ止めていた。
強化合宿は連日厳しく、さすがの先輩も疲れている日は私ともあまり会話もせず先に眠ってしまう事もあった。
それでもお風呂には毎日一緒に通い、そこで1日の出来事や今後の事を話し合った。
互いの背中を流し合うのも毎日の事で、私が最も気を張る時間だった。
「ヨシ、前より焼けたし筋肉増えたよなー」
先輩は私の思いも知らずに私の身体に触れてくる。
屋外プールで泳ぐ事もあり、日焼けしやすい私は元々色黒なのに更に黒くなっていた。
「俺ももう少し筋肉つけて黒くなりてーな」
「あ…あの…晃明先輩…くすぐったいんですが…」
肌を撫でる先輩に、私は嘘をつく。
これ以上触られていたら我を忘れてしまいそうだったからだ。
「あっ、悪ぃ!俺、セクハラ入ってたな」
本当はもっと触れていて欲しいし、それ以上の事もしたい。
そんな思いを、私は必死に忘れようとしていた。
「はーっ、気持ち良かった。明日も早いし、もう寝ようぜ」
「そうですね」
部屋は和室で布団で寝ているのだが、先輩が布団を離して寝るのは寂しいというので布団をくっつけて寝ていた。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
先輩は眠るのが早くて、しばらくするとすぐに寝息が聞こえる。
私は先輩が眠ったのを確認すると、気づかれないように布団から出て室内にあるユニットバスへ向かった。
毎晩毎晩、私は自慰に耽っていた。
現実では起こり得ない事…晃明先輩と性行為をしている事を思い浮かべた。
今日はいつもよりも長く身体に触れられたからだろうか、3度続けて達してもまだ収まりがつかなかった。
己の欲深さに嫌気が差したが、止められなかった。
「晃明先輩…っ…」
私だけに甘え、縋ってくる姿を想像し、そからまた2度続けて達したところでようやく私の分身は落ち着いた。
浴衣を脱いでシャワーを浴び、クールダウンする。
そっと部屋に戻ると、晃明先輩の寝息が聞こえ、私の方を見て眠っていた。
「う…ん…っ…」
先輩が洩らす寝言が可愛らしく、どこかいやらしい。
布団に入ると、その距離の近さに私は動揺した。
手を少し伸ばしただけで髪や頬にすぐ触れられる。
私はごくりと唾を呑み、先輩に触れてしまった。
全然起きない晃明先輩。
指先で柔らかな唇をなぞっても、すやすやと眠っている。
「晃明先輩…」
私は我慢できず、先輩がぐっすり眠っているのを確認すると、その唇に口付けた。
「んぅ…っ…」
ただ唇を押し当てるだけのキスを、どれほどの時間しただろう。
それでも先輩は起きなかったので、私は安堵した。
想像していたよりも遥かに柔らかで心地良い唇の感触に、私は興奮してしまい、再びそっと布団を抜け出してトイレに向かった。
その夜、私はまた2度続けて達し、練習での疲れもあったのか先輩に起こされるまでぐっすり眠ってしまった。
翌日の練習では先輩に密かに口付けたという事実に集中力が欠けてしまい、散々な1日になった。
「今日のヨシ、らしくなかったけど大丈夫か?」
と晃明先輩にも心配をかけてしまったので、私はもうあんな事はしないと心に誓った。
けれど妄想の中ではいつも、あの感触を思い出しては幸せな気持ちになった。
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