8 / 132

6話

ー4月6日ー 「母さん!行ってきます!」 僕が扉を開けると 懐かしいあいつが立っていた... 「よ!羽瑠!」 「翔!!」 僕は思わず抱きついた。 僕が抱きついたのは、幼い頃から 【よしだ、よしなが】の苗字が近いっていう理由で仲良くなって以来、ずーっと 一緒にいる、僕が心から信頼できる友達.. 吉田 翔(よしだ しょう) 「なんだよ!いきなり笑」 「...なんか、凄く久しぶりに会った 気がして...」 「笑!何言ってんだ?この間一緒にゲームした ばっかりだろ? そろそろ、勉強のしすぎで頭おかしくなったん じゃないか?」 「...だよね笑なんでもない笑」 少し涙がでたのはここだけの秘密。 だって、翔は高校を卒業したあと、 Jリーガーになるって言ってアメリカに 行ってしまったから... 本当の僕にとったら3年ぶりなんだよ... 会いたかったよ、翔... 「おい!羽瑠!そろそろ離してくれ笑 なんかのラブストーリーみたいになってるからさ...笑」 「あ...ごめんごめん笑」 「ってか、お前その髪とメガネは何だ?」 「え?」 「「え?」じゃねーよ笑 高校生になったらイメチェンする!って あんなに張り切ってただろ? なのに...なんで逆に退化してるんだ?」 「退化って...酷くない? これも一応僕なんだけど!」 翔がいうのも無理もない、前の人生の僕は 自分の容姿に自信が持てなくて、目立たない ように、気づかれないように隠してきた... でも、あの人に会って、あの人を好きになって まぁ、《普通の人》になる努力をした... 今は...あの人が好きだと言ってくれた顔も 瞳も...前髪と眼鏡で全部隠した... でも、これが本当の僕だから... 「...まぁ、変な虫がつかないから、俺は いいと思うぞ?」 「何言ってるの?イメチェンしても、誰も 近づいてこないよ笑」 「ハァー、お前はそろそろ自分の顔をよく見た方がいい...いや、なんでもない。 何回言っても無駄だ!」 「変な翔...」 「うるせー! ..っやべ!入学式遅刻するぞ!急ぐぞ!」 「うん!」 僕たちは自転車を漕ぎ出した... 僕の青春を過ごした場所に向かって...

ともだちにシェアしよう!