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31話

目の前に愛した人がいるのに寝られるわけなくて、隙を見て壱哉さんから離れた。 「よいしょっと...」 まじまじと見ると、ただ寝ているだけなのに見惚れてしまうぐらい整った顔... 心がズキリと音を立てる。 「壱哉さん...」 僕の愛を捧げた人で僕を捨てた人... 「どうして...僕を捨てたの...」 そんな言葉とともに瞳から流れ落ちる僕の想い。 気づいたら壱哉さんの顔に手が伸びていた。 残り数センチの距離だったとき... 「お前が俺を襲うのか?」 目は閉じているのに声が聞こえるから一瞬何が起きているのか分からなかった。 「え...あっ、なんで...」 まさか、起きていたなんて... あれ、僕...【壱哉さん...どうして...僕を捨てたの...】 僕は何てことを... 聞かれていたら終わりだ... 「お前が俺を襲おうとしたからだろ。 大胆なやつは嫌いじゃないがお前は俺の好みじゃない。」 「......。僕は襲おうとしたわけじゃありません...」 聞かれてなかったことは良かったけど、好みじゃないという言葉が鋭く心に刺さる。 この場から離れたくて勢い良く立ち上がったとき... 突然視界がゆがんで体中の支えが無くなった。 足から崩れ落ちていくのがスローモーションのようで...

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