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32話

「何回倒れれば気がすむんだ」 僕はまた、壱哉さんに抱き留められていた。 「す、すみません。 もう、だ...大丈夫です」 「そんな顔して大丈夫なやつがいるか」 そう言うといきなりさんの手が伸びてきて、 思わず目をつむってしまう。 次の瞬間、おでこに感覚があった。 「あの...手がすごく熱いですよ」 「馬鹿か。俺の手が熱いんじゃなくて、 お前が冷たいんだ」 「え?そんな...」 壱哉さんに言われるまで 自分が震えていたのは気づかなかった... 「た、たしかに少し寒いかもしれないです...」 強がって笑ってみたけど、 本当は寒くて震えが止まらなかった。 「くそっ..」 壱哉さんは立ち上がると、来ていた上着を脱ぎ僕にかけた。 「え、あ、あの、僕は大丈夫ですから...」 「いいから着てろ。」 「でも...」 「その口を塞いでやろうか?」 「......。」 僕は何も言えず、静かに上着を着た。 上着も着て温かくなったはずなのに、 震えが止まらなくて、悪化してるのが分かった。 「ここを出るぞ。乗れ。」 そう言うと、壱哉さんは僕の前で背中を向けてしゃがんだ。 「じ...自分で歩けます...」 「早くしろ。俺は気の長いほうではない。 ここで死ぬか、黙って乗るか選べ。」 僕は何も言い返せずに静かに乗った。 なんで、こんな僕にも優しくするんですか ずるいよ...。 そんな僕の想いは届くことなんてなく。 僕たちは暗い森の中を歩き始めた...

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