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33話
長いこと歩き続けたけど、風景はかわらないまま人の気配すらしなかった。
壱哉さんも僕も限界を迎えていた。
「大丈夫か?」
「はい...震えは...止まったんですが、少し...ぼーっとします...」
「...もう少しだから、絶対寝んなよ」
「はい...」
「なんでもいいから、話してろ」
「なんでもって...
じゃあ、聞いてもいいですか?」
「俺にか?」
「どうして...僕を...
助けて...くれるんですか?」
「別に...理由なんてない。
だから、感謝もするな」
「そ...そうなんですね...
でも...ありがとう...ございます。」
「だから、礼なんて...」
「でも...また...ハァ...死んじゃうんじゃないかって...ハァ、ハァ...お、思っていたので...」
それ以上言ったらだめだと
頭では分かっているのに僕の体は
いうことを聞いてくれなくて...
「また?何言って...」
「一人は...ハァ、ハァ...悲しい...か...ら...」
死んだことを受け入れられている。
そう、思っていた...だけど、
本当はまだ...あの時の恐怖が
消えていないのだと知った。
そして、僕の意識は
この言葉を最後に消えていった。
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