98 / 132
43話
「羽瑠、大丈夫か?」
翔が心配そうな顔でこっちを見るから
嫌な気持ちがどこかへ消えていく。
「ぜーんぜん大丈夫!
僕にはノーダメージだよ笑」
「ノーダメージって...」
「それにさ、なんか...春山先輩が言ってたこと、ちょっと分かるんだよね...」
「...お前はお人好しを通り越して、ただの馬鹿なのか?」
ば、馬鹿って...言い過ぎじゃない?
そんな呆れるようなこと言ったかな?
「そりゃーさ、醜いって言われたことに対して
納得してる訳じゃないけど、生徒会に入るためにあの人も沢山努力してたんだって考えれば、
こんな僕みたいなやつが簡単に入って、納得いかないかなって...思ったりしちゃうんだよね。」
だって、過去の僕もそうだったから...
生徒会に入るためにたくさん努力したし、壱哉さんの隣に並んでる人を見て、なんで僕じゃないの?って思ったこともあった。
だから、気持ちが分かるっていうかさ...
まぁ、今までのことは許す気はないけどね。
「そんなこと思うな!
このお人好し馬鹿っ!!」
「翔。それ、悪口だからね?
僕でも傷つくからっ!」
「あの...吉永くん...」
あ!そうだ、まだ生徒会の人達がいたんだった。
「あっすみません!
えっとー...生徒会の皆様、
今回はありがとうございました。」
「吉永くん...僕...」
千景先輩が不安そうな目でこっちを見ていた。
「千景先輩も全部知ってたんですね。」
壱哉さんや京介先輩達の話を聞いても焦ってないってことは生徒会のメンバーは知ってたってことになるもんね。
「うん...
吉永くんと病室で話した後にいっちゃん達に呼ばれて...それで...今回の計画を話したんだ...そしたら、皆も調べてたみたいで...ごめんね。黙ってて...」
「全然大丈夫ですよ!
僕だけじゃあの人を認めさせることは出来なかったので、結果オーライです!
本当にありがとうございます。」
「礼なら九条に言え。
九条が言わなければ俺も、他のやつも
気づくことはなかったからな。」
い、壱哉さんが言ったんだ...
「あっ...そうだったんですか...
あ、ありがとう...ございます。」
揺れるな!
こんなのこの人にとっては
ただの気まぐれなんだから...
「...別にお前のためじゃない。」
「そ、そうですよね...」
そんな想いを押し殺すように
僕は、引きつった笑顔で返事をした。
ともだちにシェアしよう!