100 / 132

45話

遭難した時の記憶がほとんどないからか、 2人でいるのが久しぶりに感じる。 沈黙が続く部屋。 できることなら今すぐ逃げ出したい状況ではあるかな... 僕は、アンクレットのことが 話したいだけなんだけど... 壱哉さんから話ってなんだろう... なんかしたかな... も、もしかして、遭難した時なんか口走ったとか? だとしたらまずい... 僕、なんか言っちゃってましたか!? なんて言えるわけないし。 よし!痛いところを突かれる前に、 話しちゃおう! 「あ、あの...生徒会が保管している、アンクレットの事なんですが...」 「それがどうした。」 「じ、実は...その...僕、持ち主を知っていて...とても困っているみたいなので、か、返して...くれませんか?」 「なぜお前に?」 「なぜって... そ、その子の友達だからですよ!」 「そこまで困っているなら、持ち主が正体を明かして取りに来るべきだろう?」 それはごもっとも... 「そうですけど...」 正体を明かしたらどんなことになるか... 親衛隊から袋叩きに合うかも... 無理無理無理!! 「で、でも!こんなに大騒ぎなってしまったら 声を上げにくくなるのは当たり前じゃないですか?」 べ、別に嘘はついてない。 実際に困っているし... 壱哉さんの鋭い視線に全てを見透かされている気分になって、僕は目線を逸らしながら抵抗し続けた。 「...分かった。」 僕の言葉に納得してくれて(いや、呆れて。) 壱哉さんは、ポケットからアンクレットを出して、僕の目の前まで持ってきてくれた。 「ほんとですか!ありがとうございます!」 ヒョイッ 受け取ろうとしたらアンクレットは 手の届かない位置に変わっていた。

ともだちにシェアしよう!