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46話

「え?」 「タダで...とは言っていない。」 「...お金はないですけど。」 「金に困っているように見えるか?」 冗談なのか本気なのかいまいち反応が読み取れないのが壱哉さんの困ったところ。 「いえ、見えません。」 「俺からの条件は、生徒会の雑務を続けることだ。」 「...え そんな!無理ですよ! それにさっき断ったばっかりですし...」 「別にしなくても構わないぞ。このアンクレットがごみになるだけだからな」 「ご、ごみ!?」 羽瑠、落ち着け。 くれた人が捨ててくれるなら未練も断ち切れるってことだと考えれば... 「やらないんだな...じゃあ」 「やります!やりますから!」 壱哉さんは満足した顔で僕の手の上にアンクレットを置いた。 「良かったぁ... ありがとうございます...」 壱哉さんとの思い出が詰まったものだけど、 この子に罪はないもん。 もう、絶対に落とさない。 僕は、心に誓った 「それと、もう1つやって欲しいことがある。」 「な、なんですか?」 「この話が落ち着いたらでいい。それの持ち主に会いに来てほしいと伝えてくれないか?」 「わ、分かり..ました...伝えてみます。」 僕がこれの持ち主として、 壱哉さんと会うことはないと思うけど... 真剣な表情で言ってくるから、守れもしない約束をしてしまった。 「あの、会長のお話は...」 「今日はもういい。だから、休め。」 やっとこの緊張感から 解放されるのは嬉しいけど、 一瞬、眉間に皺を寄せたように見えたのは、 気のせいかな... 「あ、はい。すみません...」 横になったら急に疲れがでてきて、 眠気が襲ってきた。 最近、ちゃんと眠れてなかったからかな... 「1ついいか?」 「何ですか...」 「あのコーヒーはお前が入れたんだよな?」 生徒会で出したやつかな... 「そう、ですけど...」 もう、まぶたが重い... だんだん瞬きの回数が減っていく。 「何か、他に入れたか?」 「な、にか...あぁ、はち...みつですかね...」 「...」 「...好きだった...で...しょ...」 「...どうして知ってるんだ?」 「スー...ハァ、スー...」 僕はそのまま、夢の中へ落ちていった。 「お前は一体..誰なんだ..」 その言葉が夢なのか現実なのか 僕には、分からなかった...

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