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6話

生徒会室に戻った僕は、予定があるからと早めに帰らせてもらった。 何か言われた気がしたけど、あんまり覚えてない。少しでも早く、あの場から離れたかったから... 「羽瑠ーーー!!」 聞き覚えのある声が聞こえて、 心が少し、落ち着いてくるのがわかった。 「待ったか!? ミーティングの後に姫ちゃん先輩から呼び出しくらってよー まったく、姫ちゃん先輩は俺のことが好きすぎて困るぜ...」 笑顔で話す翔を見るとさっきまで考えてたことがどうでも良くなってくる。 「大丈夫。全然待ってないから。」 「んぁ?...お、おう! なら良かったけどよ、生徒会はもう終わったのか?前はあんなに長かっただろ?」 「...うん。今日は、初日だから。」 「そっか... じゃあ、帰るぞー!」 「うん...」 僕の心には1つ無視できないものがあった。 最初はあの人のためだったかもしれない。 僕に気づいて欲しくて... 僕だけを見て欲しくて... もう、あんなこと経験したくないから、過去まで来たけど、だけど... 自分がやってきたことまで否定して、 新しい人生を生き続けるの? ねぇ羽瑠。君はこのままあの人から逃げ続けるの? 「だめ...このままじゃ、だめだ。」 最初から分かってたんだ。 逃げてるだけじゃダメだって。 自分自身に向き合わなきゃダメだって。 昔の...夢中になって変わろうと思ってた自分を...嫌いになんて、なれるわけないんだから。 「...い、おーい!はーるー!!」 「翔。」 「なんだ?」 「友だちとしての頼みがある。」 「お、おう。」 「...付き合ってほしい」 「え?」 「僕、やっと気づいたんだ! 本当の気持ちに。」 「い、いや、は、羽瑠は大事な友だちだけどよ、俺には心決めた人がいて...」 「ねぇ、何言ってんの?」 「えぇ?」 「俺が付き合って欲しいのは、美容室ね。 び・よ・う・し・つ!」 「...え?美容室!?なんだよ〜! 焦ったじゃねーか!」 「勘違いにもほどがあるよ? 僕にも好みっていうものがあるし。」 「おい?...ってなんで美容室なんだ?」 「変わりたくて。 このままじゃダメだと思うからさ... 僕、負けない!」 「...よく分かんねーけど、 親友の頼みを断るわけねーよ! よっしゃ!行くぞー!」 「うん!」 「柳田!」 「はい。坊っちゃま。」 ガチャ どこからとなく現れた柳田さんは嬉しそうに車のドアを開けていた。 あれ?泣いてる? 翔が大人しく車に乗ることなんてないからな... なんか、ごめんなさい柳田さん。 「え!?車で?自転車でいいよ...」 「早く乗れ!善は急げだ!」 「でも、自転車...」 「柳田。」 「もう手配済みです。」 「は、早い。」 「さぁ、行くぞー!!」 「なんで翔が盛り上がってんの...」 ちょっと呆れながら、学校をあとにした。

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