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37話
コンコンッ
「失礼します。」
生徒会室の扉を開けると、
壱哉さんはいつもの席で書類に目を通していた。
そして――
「......。」
もう一人。
見覚えのある人がいた。
「それでは、こちらの書類はよろしくお願いいたします。」
「あぁ。」
「失礼いたします。」
須藤咲先輩。
この前、
天空テラスで会ったばかりの人。
僕と目が合う。
「......。」
一瞬だけ、
咲先輩の表情が変わった気がした。
...やっぱり、
僕、この人に嫌われてるよね?
理由はなんとなく、
分かるような気もするけど...
「吉永君。」
「え?」
突然名前を呼ばれて、
背筋が伸びる。
「...な、なんでしょうか。」
「いえ。」
咲先輩は、
綺麗に微笑んだ。
「大変そうね。」
「え...」
「九条様の補佐。」
「......。」
その笑顔は完璧なのに、
なぜだろう。
なんだか少し、
怖い。
「では。」
「あ...はい。」
咲先輩は僕の横を通り、
ガチャ
静かに扉を閉めた。
「......。」
...大変そうね、か。
心配してくれた...
わけじゃないよね。
「おい。」
「っ、はい!」
「いつまで突っ立ってる。」
「あ...すみません。」
慌てて壱哉さんの方へ向かう。
「それ。」
「え?」
指差された先には、
机の端に置かれた
分厚い書類の束。
...嫌な予感しかしない。
「なんですか、これ。」
「廃棄書類だ。」
「......。」
「処分しろ。」
「...僕が?」
「他に誰がいる。」
「......。」
ですよね。
一瞬でも、
違う答えを期待した僕が馬鹿だった。
「...分かりました。」
書類の束を持ち上げる。
重っ...
「これ、全部ですか?」
「あぁ。」
「......。」
これを、
全部...
「...九条先輩。」
「なんだ。」
「僕、一応生徒会長補佐ですよね?」
「あぁ。」
「...。」
「それがどうした。」
「...いえ。」
やめよう。
聞いた僕が悪かった。
僕はため息を飲み込み、
シュレッダーの前まで書類を運んだ。
「......。」
一枚ずつ確認しながら、
処分していく。
会議で使った資料。
古い名簿。
修正前のプリント。
もう必要のない申請書。
...本当に、
僕じゃなくてもできる仕事ばっかりだ。
ウィーン
「......。」
ウィーン
「...。」
何枚目だろう。
数えるのも、
もう面倒になってきた。
ウィ――
パサッ
「...ん?」
書類の間から、
何かが床に落ちた。
「......。」
白い封筒。
拾い上げる。
「手紙...?」
表には、
綺麗な字で、
『九条壱哉様へ』
と書かれていた。
「......。」
なんで、
こんなところに...
書類の束に視線を戻す。
少しだけめくると――
「...え?」
もう一通。
淡いピンク色の封筒。
その下にも、
水色の封筒。
「......。」
一通じゃない。
何通もある。
どれも、
壱哉さん宛。
可愛らしいシールが貼られたもの。
綺麗な便箋が透けて見えるもの。
端に小さくハートが描かれたもの。
...これって。
どう考えても、
「ラブレター...」
小さく呟いた。
胸の奥が、
ざわつく。
なんで、
ラブレターが廃棄書類の中にあるの?
「......。」
さっき、
この書類を持ってきたのは――
咲先輩...?
「...いや。」
何考えてるんだ、僕。
勝手に疑うなんて失礼だ。
それより――
僕は手に持った封筒を見つめる。
これも、
捨てるの?
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