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13※
俺の体を離した騎士は真っ赤になって「シーフ殿」とやつを呼ぶ。
「いやー場所は考えねえと危ねーぞ。……それとも、周りが見えなくなるほどだったか?」
「す、済まない……その」
「あー、皆まで言うなよ。安心しろ、俺は別に邪魔しに来たわけじゃねえんだ。けど、あいつがいなくてよかったな。今の見られてたらきっとまたあいつ怒り狂ってただろうな」
……最悪だ。最悪だ。よりによってこの男に見つかるなんて。別に、やましいことなどない。――ないはずなのだ。
そうわかってても、ニヤニヤと笑うやつの目が嫌だった。騎士から離れ、逃げようとすればいつの間にかに側にまでやってきていたシーフに「おっと」と腰を抱かれる。
「逃げるなよ、雑用ちゃん」
「っ、離せ……」
「そうしてやりたいのは山々なんだが、本格的にうちのリーダーが使えなくなりそうなんだ。そろそろ機嫌直して帰ってきてもらうぞ」
「……ッ!」
「シーフ殿、いくらなんでそれは強引では……」
「おっと。ナイト、悪いがこれはうちのパーティーの決まりなんでな。……ま、こいつもガキじゃねえんだ。あとのことは当人たちに任せりゃいいんだよ」
「だが……」
「良いんだ」
もう、良いんだ。そう口の中で繰り返す。
騎士は何か言いたそうだったが、俺は観念することにした。
元よりこれ以上逃げられるとは思っていなかった。
「もう十分頭は冷ました。……迷惑かけたな」
「……スレイヴ殿」
「おーおー随分と物分りいいじゃねえの。……新しい彼氏にいっぱい甘えて欲求不満が解消されたのか?」
耳元で下卑たことを繰り返すシーフに頭にカッと血が上った。お前、と掴みかかろうとしたとき、騎士に見えないところで尻を揉まれるのだ。
「……ッ!」
「まあいいや、あとでちゃんと聞かせろよ」
引き剥がそうとすればすぐにやつの手は尻から離れた。けれど、再度腰を抱かれる。
「それじゃ帰るか。……ほら、歩けよ」
「なら手を退けろ。……歩きにくいんだよ」
心配そうにこちらを見てる騎士。余計なことを気取られたくなかった俺は、シーフが調子に乗り出す前にさっさと宿屋に向かって歩き出した。
最悪だ。最悪だ。最悪だ。繰り返す。
そうでもしなければ自分を保つことができなかった。
あんな場面をよりによってシーフに見られたことから想定していた。最悪の事態は。
「っ、ん、……ッ、ふ、ぅ……ッ!」
宿屋で待機してる勇者に会いに行く。そんなこと言って騎士から俺を引き剥がしておいて、こいつはなんなんだ。目的地である宿に戻るどころか近くの路地に押し込まれる。デジャヴを覚えたときには遅かった。壁に押し付けられる体。逃げ場を塞がれ、唇を貪られる。
「っ、ん、は、なせ……この……ッ!」
「……っ減るもんじゃねえし、良いだろ?あいつには抱き締めさせておいて、もしかしてもうそれ以上もヤラせたのか?」
「っ、違う、アイツは、お前みたいなやつらとは違う……ッ!一緒にすん……ッ、んぅ、っむ、……するな……っ、ぁ……ッ!」
人の話を邪魔するように何度も唇を塞ぎ、舌を絡めてくるこの男から必死に顔を反らせば、空いた手で性器を撫でられる。そのまま衣類越しに揉まれれば、それだけでぶるりと腰が重く疼いた。
「っ、や、めろ……ッ」
「はっ、お前さぁ……勇者を怒らせたんだってな?手酷く犯されたんだろ?」
「っなんで、知って……」
「カマ掛けただけだっての。……なるほどねえ?道理で帰りたくねえわけだ」
玉の裏側から膨らみ全体を柔らかく潰すように撫でられれば、僅かな窮屈さともどかしさに体が跳ね上がった。仰け反る腰を更に抑えつけ、シーフはやわやわと刺激してくる。
「お、勃ってきやがった」と笑うやつに背筋に汗が滲む。
「……ッ、ぅ、……やめろ……ぉ……」
「いい声。感度いいなぁ?昼間だからか?」
「っくそ、やろ……ぉ……ッ」
「相変わらず可愛いお口だな。おら、舌出せ」
「ッ、ん゛ッ、ぅ、ん゛ぷ……ッ!」
萎まった舌を絡め取られ口の外まで引きずり出されたかと思えば粘膜同士を絡め合うようにねっとりと舌の根から先っぽまで蛇のように絡まれる。その都度ぐぢゅぐぢゅと濡れた音が口の中で響き、先っぽを甘く噛まれ、吸われるだけで腰に溜まった熱はどんどんと重さを増していくのだ。逃げ腰の股の間に差し込まれたやつの膝の頭に玉から下腹部を擦り上げられ、堪らず仰け反る。
「っ、ぁ、や、めろ」
「……この前は邪魔入ってできなかったもんな。……なあ、いいだろ?」
「っ、シーフ……っん、っ、や、だめだ……やめ……ッん、ぅ……ッ!)
最初から俺の意思など汲む気などなかったくせに、膨らみ始めた下腹部を指先で擽られればそれだけで頭の芯がゾクゾクと震えた。
「騎士のこと、勇者に知られちゃまずいだろ?……広場で人目もくれずに抱き合ってた、なんて聞いたらあいつ嫉妬でどうにかなんじゃねえの?」
「っ……や、めろ……」
「じゃあ、自分で脱げよ。ああ、上だけでいいから。……あんま酷使したら可哀想だからな、その胸で俺を気持ちよくしてくれよ、娼婦みたいにさ」
すり、と衣類越しに胸の突起を撫で上げられ、息を呑む。変態のクソ野郎。掴みかかりたかったが、この男は良くも悪くも人心の掌握に長けている。俺が何を恐れているのか全部理解してるのだ。
「……っ、悪趣味野郎」
何が楽しいのか理解できない。服の裾を持ち上げ、自分の胸を自ら晒すという滑稽な動作にただどうにかなりそうだった。
「もっとちゃんと持てよ。……いや、裾はその口で噛め。んで、そのかわいー乳首が見えるようにちゃんと胸を反らすんだぞ」
「……っ、ぅ……ん……」
くそ、クソクソクソ。心の中で罵倒しながら裾を噛み、上半身、やつに見せつけるように胸を反らす。何が楽しいのかすら理解できない。外気に晒され、肌寒さでつんと尖ったそこを見てシーフは笑うのだ。
「……すげえ真っ赤だな。恥ずかしいのか?」
「……ッふ……ぅ……」
「ここも、すげえ勃起してる。……美味そうだな」
「ッ、ん、ぅ」
片胸の突起を舐められ、そのまま人の胸に顔を埋めるやつに血の気が引いた。掠める前髪がこそばゆくて、やめろ、と口から裾を離しそうになればシーフは俺の裾を掴み、再度俺の口にねじ込むのだ。そのまま噛んでろと、そう言うかのように上目で一瞥するのだった。
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