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 シーフはそのまま俺の胸に唇を押し付ける。  尖ったそこを唇で挟むように咥えられ、そのまま口付けでするかのように軽く吸われればそれだけで息が詰まった。 「……っ、ふ……ッぅ……」 「っは、……んなに嫌なのか?バレんのが」  べろりと現れる赤い舌を這わされ、赤く腫れ上がったそこを飴玉かなにかのように転がされれば胸の奥がじんじんと熱くなる。  答えられないとわかっててこれだ。睨み返せば、やつは「おお、怖えー」と笑いながらそこを甘く噛むのだ。瞬間、頭の中が電流が走ったみたいに真っ白になる。  びくんと跳ね上がる体を抑え込まれ、更に執拗に責め立てられる。 「っ、ぅ、く、んぅ……ッ」  さっさとしろ、早く終われ、クソ、クソクソクソ。  やつの頭を引き剥がしてやりたいが、下手な真似をできない自分が悔しかった。何を恐れてるのかすら分からない。噛まされた裾に唾液が吸い取られるのを感じながらただ目を瞑って快感を殺す。 「……っ、健気なこった」  ちゅ、と唾液で濡れた胸から舌を離したシーフは笑って息を吹きかける。それだけでびくりと大きく跳ねる胸を見てやつは笑った。バカにされた腹立たしさと、思い通りにならない自分の体が悔しくて顔が熱くなる。  片方の胸を撫でられ、堪らず逃げ腰になったとき。シーフに肩を軽く叩かれた。 「なあ、そのまま膝付いて」  なんで、と答える頭もなかった。  さっさと終わらせたい一心で言われるがまま膝を付く。目の前に丁度やつの下腹部が映り込み、その体制に気付いたときには遅かった。 「っ、ま、て……ッ」 「おいおい、ちゃんと噛んでろ……って言ったよなあ?」  口から裾を離す俺に、シーフは怒るわけでもなく楽しげに笑いながら自分のベルトを緩めるのだ。そして、いつの間にかに反応していた己の性器を取り出すシーフに青褪める。 「服、ちゃんと持っとけ?汚れても知らねえぞ」 「っ……お前は、頭がいかれてる」 「街中でこんなやらしー胸丸出しのお前に言われたくねえな」 「……ッ!ゃ、めろ……ッ!」 「やめるか?俺は別にお前が嫌がるんなら別のやつ呼ぶだけなんだがな」  暗に勇者に全部話すと言ってるのだろうとわかったから余計血の気が引いた。  奥歯を噛み締めれば、唇が震える。シーフはそんな俺を見下ろして笑うのだ。 「……本当大好きだよなぁ、あいつのこと。そんなに好きなら喧嘩しなけりゃいいのに」 「っ、黙れ……ッ」 「イライラすんなよ、ほら、もっとこっち来い」  壁際に逃げていた上半身を軽く抱き寄せられたとき。胸に勃起した性器を押し当てられる。その感触と熱に堪らず慌てて離れようとするが、シーフは俺の肩を掴んだまま片方の手で性器を握り、俺の胸に擦りつけてくるのだ。 「っ、な、にやって……ッ、ゃ、めろ……ッ」 「逃げんなよ。……にしても本当平らだなぁ、おまけに硬えし……」 「っ、じゃ、じゃあやるな……ッ、ぅ」  中途半端な愛撫のせいで限界まで感度を高められた乳首に硬く勃起したそれを擦り付けられる度に胸が震える。気持ちよくないのに、ぬるぬると先走りを塗り込むように執拗に胸で擦られるのだ。 「小せえ乳首。弄り甲斐出るように育ててやらねえとな。勇者も喜ぶだろ、仲直りもすぐできんじゃねーか?」 「ッ、ゃ、め……ッ」 「っは、……気持ちよくねえけどこの眺めは結構クるな」  気持ちよくないならするな。  ぬちぬちと音を立て、更に胸を擦られる。逃げたいのに背中に回されたシーフの腕のせいで身動きすら取れない。粘着質な音は次第に増し、シーフの腰の動きも激しさを増した。 「っ、ん、ぅ……ッ、ふ……ッ」 「……やべ、結構イケるわこれ。なあ、そのまま舌這わせろよ、先っぽ」 「……ッ、ん、ぅ……」  なんで俺が、と言い返したいが、ずっとこんな辱めを受けるくらいならとおずおずと舌を出す。そのままシーフのものに舌を這わせれば、シーフは笑いながら俺の頭を撫でるのだ。 「っ、……ん、そうそう、上手上手」 「……っ、ふ、ぅ……ッ」  遠くから聞こえる喧騒。誰が来てもおかしくない路上で昼間からこんなことしてる自分が信じられなかった。けれど、場所が場所だからか背徳感により神経は研ぎ澄まされ、些細な行為ですら過敏に反応してしまいそうになる。  シーフは射精が近くなると口数が少なくなる。  吐息が混ざり合い、濡れた音だけがやけに大きく響く。鼓動に合わせて脈打つ性器を押し当てられ、擦られる俺の体を使った自慰でしかない。わかっていても、それでも覆い被さる影に、濃くなる性の匂いに頭がクラクラして何も考えられなくなるのだ。  脈がより大きく響いて伝わったときだ、胸から性器が離れたかと思いきや思いっきり胸元にどろりとしたものがぶっ掛けられる。 「……っ、やべ、口に出そうと思ったのに」  そりゃ良かったクソ野郎。

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