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06※

「……っ、スレイヴ」 「お、まえ……っ、ん、ぅ……ッ!」  顎を掴まれ、唇を重ねられる。触れるだけだったキスは激しさを増し、離れようとするががっしりと掴まれた腰は動くことすらできない。 「っ、ふ……ッ」  閉じる唇を舐められ、顔を逸らそうとするが顎を固定する手は離れない。  微かな酒の匂いに嫌な予感がした。  逃げたいのに逃げられない。  それどころか、蹌踉めきそうになる体を抱き竦められるのだ。 「っ、や、めろ……っ、こんなことしたってなにも……ッ」  ならない。そうわかってるはずなのに。酷く久しぶりのあいつの熱に、指の感触に、慣らされてしまっていた体は俺の意思関係なしに熱を持ち始めるのだ。気付かれたくなくて必死にやつの腕から抜け出そうとしてはまた唇を遮られる。今度は唇を閉じるのを忘れていたせいで安易に抉じ開けられ、舌か侵入してきた。 「っ、ぅ゛……ッ、ん、ぅ、ふ……ッ!」 「……っ、お前だけは駄目だ、行かせない」 「っ、や、っめ、……」  足の隙間に膝を捩じ込まれ強引に開かされた股、その奥、隠そうとしていた股間の膨らみを揉まれ堪らず震えた。 「っ、やめろ、……触るな……ッ!」 「……お前だって、今更俺と離れるなんてできるわけないだろ」 「っ、ぁ……っ、や、めろ……ッ!」  寝巻き代わりの薄手の服越しに揉まれ、前屈みになる俺の体を壁に押し付けられる。強く掴まれ、下着ごと扱かれ、粘り着いた音が耳元で響き出し血の気が引いた。 「っ、さ、わんな……ッ!」 「……っ、スレイヴ、お前は本当に感じやすいな。顔も見たくない男にちょっと扱かれただけでこんなに濡れるなんてな」 「っ、や、めろ……っ、やめろ、こんなの……ッ!」 「……他の奴らに何を吹き込まれたのか知らないが、お前がそのつもりなら俺にも考えがある」  何を、と問いかけるよりも先に下着の中に入ってきた勇者の指に息を呑んだ。尻の谷間に滑り込んできたその指は躊躇もなく俺の後孔に侵入するのだ。閉じていた口を広げるように捩じ込まれる久しい指の感触に体が否応なしに反応する。やめろ、と声を上げるが、勇者は指を止めなかった。 「っ、ぅ、あ……ッ!や、め……ッ!」 「お前を唆した相手は誰だ?……昔のお前だったら俺から逃げようだなんて言わなかっただろ。……お前は変わった。あんなことしてまで俺と一緒にいることを選んでくれたお前が俺から離れるなんて言うはずがない」 「っ、……ッ!」 「メイジに妙な魔法でも掛けられたか」 「っ、ち、が……ッ」 「シーフに悪知恵を仕込まれたか」 「っんな、わけ」 「――じゃあ、ナイトか」 「……ッ!」  脳裏にナイトの顔が浮かんだ瞬間、心臓が握り潰されるかのようにぎゅっと苦しくなる。  勇者の動きが止まった。しまった、と後悔したときには遅かった。 「…………そうか、あいつか」 「っ、ち、が……ぁ……ッ」 「確かに、ナイトは妙にお前のことを気にしていた。……あいつが、お前に余計なことを吹き込んだのか?」  冷たく響く勇者の声に恐怖を抱いた。違う、そう言いたいのに中をひっかかれ、声が掻き消される。垂れる先走りを絡め取り、数本の指で内壁を掻き回されればそれだけで頭の中が真っ白になる。俺の弱いところを知ってるあいつはそこを的確に愛撫するのだ。逃れられない快感に塗り潰され、やめろ、と上げる声すら甘くなってしまうのが悍ましかった。 「っ、あいつは、関係ない……ッ!」 「……スレイヴ、俺に隠し事が通用すると思ってるのか?」 「っ、あ、ゃ、め……ッ!」 「俺を捨ててあいつと二人で暮らすつもりだったのか?……スレイヴ、俺以外の男を見つけたらそっちに鞍替えか」 「そんなんじゃ……っ、ね、ぇ……っ、あいつは、お前みたいなことしてこないっ、こんな、こんな真似……ッ!ッぅ、あ……!」  じゅぶ、と音を立て指を一気に引き抜かれる。掻き回され、ぽっかりと開いた肛門を撫でられればそれだけで腰が揺れた。 「こんな真似か。……じゃあお前のここが俺の形になってるというのも知らないのか?」 「っ、……ッ!」  耳元で囁かれ、カッと顔が熱くなる。  わざと言葉で辱めるようなことを言うこいつに無性に腹が立たったし、否定できない自分が何よりも悔しくて、何よりもそんな言葉にすら反応してしまう浅ましい自分の体にも嫌気が差した。 「……そうか、本当に何も知らないのか」  ほんの一瞬、あいつの声が笑った気がした。  それもつかの間。 「っ、やめろ……ッ」  ずり下げられた下着、露出させられる下半身に押し付けられる久し振りの熱に寒気を覚えた。誰が起きてきてもおかしくないこんな場所で事に及ぼうとする勇者から逃げようとするが、拘束する腕に力が増した。 「……お前がそのつもりなら俺にも考えがある」 「な、に言って……っ、ん、ぅ……ッ!」  臀部に擦り付けられる性器に堪らず口を覆った。腰を引くことも許されない。谷間に押し付けられる性器は、口を閉じようとする肛門に押し当てられるのだ。駄目だ、やめろ。そう足を閉じ、腰を落とそうとするが脇ごと抱えられ更に腰を押し付けられる。 「っ、ぅ、あ……ッ」 「……っ、スレイヴ」 「っ、やめ……ろ……ッ!」  体重を掛けるように入ってくる性器の感触に堪らず仰け反った。嫌なのに、こんなことしたくないのに、あいつは問答無用で俺の中に入ってくるのだ。濡れた音が響く。  前回のように痛みは伴わないが、それでも俺の意思を無視するやつに犯され反応する自分が歯がゆくて仕方なかった。 「く、ひ……ッ!ぁっ、嫌だ、っ、ん、ぅ……ッ、ぬ、け……ッ!」 「……っ、あまり大きな声を出すと皆が起きてくるぞ」 「……ッ!」  やめろ、と頭を振ってもあいつは無視して更に腰を沈めてくるのだ。気持ちよくない。こんなの、最悪だ。そう思うのに。先走りを塗りつけるように中を舐られ、閉じようとする奥を無理矢理抉じ開けるように更に腰を打ち付けられる。言葉は途切れ、最早勇者に届いているかすらも分からない。  抵抗して逃げることすらもできなかった、組み伏せられ、背後からただ犯される。声を出さないように口を覆い、堪えることしかできない。性急なピストンに声が漏れそうになり必死に堪える。気まぐれに唇を塞がれ、腿を掴み上げられ、更に広げられたそこに深く性器を挿入してはゆっくりと引き抜き、そして一気に奥まで貫かれる。それをされる度に意識が飛びそうになるのだ。声を堪えることも忘れていた。声すらも出なかった。痙攣する体を抱きかかえられ、何度も犯される。 「っ、……ッ、ぐ、ぅ……ッ!」 「……っ、スレイヴ、またイッたのか。お前は本当にここを擦られるのに弱いな……っ」 『ここ』と臍の裏側を嵩の突っ張りで撫でられびくんと体が跳ね上がった。脳汁が溢れるようだった。嫌なのに、体が自分のものではないように感じる。 「っ、ゃ、……も……ッ」 「……聞こえないな」 「っ、ひ、ィ……ッ!」 「……っ、撤回しろ、俺から離れないって誓うんだ」 「あんな血迷いごと二度と口にしないと言え」項を噛まれ、舐められただけであの夜の痛みが蘇り体が竦む。同時に鼓動が破裂しそうなほど熱が、脈が乱れるのだ。 「スレイヴ……ッ!」 「っ、だ、れが……言うか……ッ!ぅ、ひ」 「……言わないなら、お前が認めるまで犯してやる」 「っ、馬鹿やろ、ッ、ぉ……ッ!ぅ、あ……ッ!」  奥を大きく抉られ、どろりとした精液が溢れる。地面にぼたぼたと落ちるそれを確認する暇もなかった。腰を捕まれ、更に奥深く捩じ込まれる性器に臓物ごと腹を抉られ堪らず嗚咽が漏れた。「ぁあっ」と女みたいな声が出て、しまったと思ったときには遅い。見つけた、そう耳元であいつが笑うのだ。 「ぃッ、あッ!や、めろ!や、ぁ……ッ、ぁ……ッ!」 「スレイヴ……っ、早く、早く俺なしじゃいられないようになれよ、お前も俺みたいに……っ」 「っ、ゆ……ッ!……っ、ん、ぅ……ッ!」  キスをされ、口を塞がれる。舌を絡め取られながら犯され続けどうにかなりそうだった。気持ちよくない、気持ちよくないのに。胸を揉まれ、唇を噛まれ、どちらのものかわからない体液で汚れた下腹部を掴まれたまま犯される。何度イッたのかもわからない。勃起した性器は痛くすらあった。ピストンをされ続け感覚の麻痺してきた下半身だが快感と振動だけは確かに頭に届くのだ。イキたくないのに射精する。俺の意思なんてそこにないのだ。萎えていたらまだよかった。こんな不毛な行為と思えるのに、しっかりと快感だけは拾い上げる自分の体に絶望した。

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