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22※
漸くイロアスに解放され、やっと終わったと安堵するのも束の間のことだった。
「っ、ぅ、ん……ッ」
夢の中、体に違和感を覚えて目を覚ませばそこにいたのはメイジとシーフだった。
驚き飛び起きそうになったが、体が動かない。イロアスとの行為による疲労からか、それともメイジの妙な魔法のせいなのかもわからない。
「な……」
「へえ、記憶なくても驚くんだな」
「そりゃあ寝込みを襲われれば誰だって驚く。おまけにこれは赤子同然だからな」
「赤子って言うなよ、なんだか悪いことしてる気分になるだろ」
「なあ、スレイヴちゃん。体の調子はどうだ?お前三日三晩あいつにハメられてたんだろ?酷い有様だったぞ」
ただでさえ起き抜けの状態で、ぽんぽんと投げ掛けられるシーフとメイジの言葉が理解できなかった。
まるで長年の友人かのように気軽に談笑する二人だが、対する自分は一糸も纏っていないことに気付く。
けれど恥ずかしさなどはなかった。
……脳の処理が追い付いていないと言った方が適正なのかもしれない。
どうしてメイジが、なんて考えなくとも分かる。概ねイロアスから話を聞いたシーフに付き合ってきたのだろう。
ベッドの上、一人手に起き上がることもできない俺の体を左右挟むようにベッドに乗り上げてくる二人に抱き起こされる。
「……まだ寝惚けてるみたいだな。まあ、手当はしてやったんだ。多少は頑張れるだろ」
伸びてきたメイジの指に顎の下を撫でられる。そのまま口を開いて舌を突き出せば、メイジはそんな俺を鼻で笑い舌を絡めるのだ。
「っ、ん、ぅ……」
「うわ、はは、どんな魔法使ったらこんなに可愛く出来んだよ。なあ、俺にもキスしろよスレイヴ」
そう楽しげなシーフに腰を抱き寄せられる。メイジは「順番だ」と冷ややかに笑い、更に深く舌を窄めて口の中を犯してくるのだ。
「ん、ぅ……ッ、ふ……ッ」
休ませてくれ、なんて言えるわけがない。
まだ頭も醒めてない状態でメイジに咥内の粘膜という粘膜を舌で舐られ、シーフに脚を開かされるのだ。
「ハハッ!すげえ捲れてんな。ここまでくりゃ立派な性器だな」
「っ、ぁ、ん、ぅ……ッ」
「処女同然まで戻すのも悪かないが、どうせ使うんだ。こっちのが挿入しやすいだろう?」
「メイジ様は本当に気遣いができる男だな、俺本当涙出そう」
骨張ったシーフの指が肛門に挿入される。
メイジの言葉通り、それは既に柔らかくなったそこに難なく埋め込まれるのだ。
まるで最初からそこが受け入れるための器官であるかのように奥まで飲み込む肛門に自分でも背筋が凍るようだった。
それ以上に、まだイロアスの性器の感覚が残っているそこを指の腹で撫でられればあっという間にあのときの熱が全身に回る。
「っ、は、ぁ……ッ」
「すげえ熱い、つか、指溶けそ……慣らす必要なさそうだな」
「ああ、そうだな。俺たちの勇者サマがちゃんと作り替えてくれてたみたいだからな」
「ほら」と閉じかけていた脚、その膝小僧を掴んだメイジはそのまま更に大きく開脚させる。ベッドの上、隠すことすらできないまま口を開きシーフの指を飲み込んでいた己の体に顔が熱くなった。
寝起きでぼやけていた思考も次第に鮮明なものへとなっていく。いっそまだ夢であった方がましなくらいだ。
「おい、目を反らすなよスレイヴ。今からここに俺の突っ込むんだからな、よく見とけよ」
ヒク、と腹部に力が入る。閉じようとするそこを更にもう一本の指で左右にぐぽりと割り拡げられれば、外気の感触に堪らず腰が震えた。
目を反らしたい。見たくなんてない。けれど、すぐ側で俺の表情をじっと見ているメイジの視線が嫌だった。
こいつだけが知っているのだ。俺は記憶があるのだと。そして、この男は明らかにこの状況を楽しんでいる。
指の代わりに押し当てられる性器の熱に息を飲む。またあのイキ地獄のような快楽を味わなければならないと思うと血の気が引いた。
それでも、今更逃げられない。
赤黒く、太い血管で覆われた性器が自分の肛門に押し当てられるのをただ俺は見ていた。来るべき衝撃を耐えるようにシーツを掴もうとして、メイジに手を握られる。ぎょっとする暇もなく、そのまま埋め込まれる亀頭。イロアスのものとは違う、それでいて固く太い性器が入ってくる感覚は同等、いやそれ以上の苦痛ですらあった。
しかしそれも最初だけだ。みちみちと閉じかけていた肉を押し開くように腰を進められれば次第に快感の方が強くなる。
メイジがなにかしたのか、もう何もわからない。シーフに犯されながらもメイジは俺の手を握ったまま離さなかった。
耐えられる。
こんなのいつものことだ。
そう思っていたのは最初だけだった。
「ぁ、あッ、待っ、ぅ、ぉ゛ぐ、ぅ……――ッ!」
「っ、やべ、中すげーぐずぐずで気持ちいい……ッ!」
「だろうな。さっきまで咥え込んでたんだからな」
なあ、スレイヴちゃん。と前髪を撫でるように掻き上げられるだけでも感じてしまいそうなほどだった。
休む暇もなく与えられ続ける快楽は拷問にも等しい。それでいて的確に弱いところを性器でゴリゴリと潰されてしまえば、既に空になったはずの睾丸が痛くなるレベルだ。
カリで前立腺を引っ掛けられ、そしてそのまま奥の突き当たりを押し潰される。それだけで全身はびくんと跳ね上がり、出したくもない獣じみた声が喉奥から勝手に漏れてしまうのだ。
「ッ、ぅ゛……ぐぅう……ッ!ひ、ッ、ぎ、ぅ」
「っ、相変わらず声は色気がねえけど……まあ全然ありだな。……おい、ちゃんと起きろよ」
「ぁ゛ッ、ふ、う……ッ!」
「そーそー……っ、締め付けが大事だからなぁ……ッハメすぎて緩くなったらメイジ様にまた処女同然にしてもらおうな……ッ!」
「ぎ、ひ……ッ!ぉ゛、やッ、ぐ、ゥ……ッ!」
肌と肌がぶつかるような音とともに腰をたんたんと打ち付けられ、リズミカルに奥を抉られれば既に空っぽの性器からはぴゅっと透明の液体が溢れぽたぽたとシーツを汚す。それを無視して、シーフは俺の唇を吸うのだ。
まるで潰れたカエルみたいに股を開き、犯される。俺だけ全裸でメイジに至っては服すら脱いでいない。恥ずかしいという概念もない。いまはただ早く終われと繰り返すことしかできない。
舌を絡め、強請るようにシーフの舌の先っぽをちゅうと吸えばやつの顔が興奮に歪む。腹の中で更に膨張する性器に堪らず腰が揺れた。浮かした腰を掴まれたまま、シーフは更に追い上げるようにピストンを早める。
早く終われ、早く終われ、早く終われ。
呪詛のように繰り返しながら、俺はシーフの背中に腕を回して舌を絡めた。最初こそはぎこちなかった行為も、イロアスに慣らされいまは何も感じなかった。
中に出される熱を感じながら最早何度目かすらもわからない絶頂を迎える。ようやく終わったのだと安堵するのもつかの間、頭を掴まれ、唇に先程まで中を犯していた性器を押し当てられるのだ。
「何休んでんだよ」と。
性欲処理要員という役職を甘く見ていた。
だから言ったのに、お前には難しいと。
そう言いたげな目をして俺を見下ろすメイジを無視して、俺は無心で鼻先の性器に舌を這わす。
ガラガラと、また一つ音を立ててなにかが壊れていく。こんなもの、耐えられる。体力には自信があるのだ。死ぬより安い。
そう自分に言い聞かせながら俺はシーフの腰を掴み、根本まで性器を飲み込んだ。
その日一日の役目を終えたとき、最早四肢に力は入らなかった。
肛門も開いているのか閉じてるのかすらもわからない。けれど、中からどろりと溢れる精液の感覚だけは確かに現実だった。
出すだけだして満足して帰っていったシーフ。部屋の中残された俺の外傷を治癒したメイジはベッドの上から起き上がれない俺を見下ろして笑っていた。
「お前にしては上出来だ。淫乱らしい演技があんなに上手いとは思わなかった」
「…………」
この男の皮肉に付き合うほどの体力もない。
びくびくとまだ痙攣してる腰を撫でられ、思わず俺はメイジを見た。
「や……っ」
「そう可愛い顔をするな。……服を着替えさせるだけだ」
「……っ」
「お前には簡単に死なれちゃ困るからな。今日は流石にあいつらもやり過ぎだが初日だから仕方ない。明日以降はあいつらにも制約を掛けさせるから安心しろ」
「大事な大事な生処理要員だからな」と笑うメイジの言葉に全身の力が抜けそうになった。
気を許してはいけない相手だとわかっているのに、メイジの言葉に助けられてる自分に複雑な気分だった。
「一先ず今は休め。お前が動けるようになればまた旅が始まるだろう。そうすりゃ、今日みたいに一日中抱かれっぱなしということも減るだろう」
「……そう、か」
立ち上がるメイジ。メイジを目で追うことすらもできなかった。そのまままるで催眠にでもかかったように眠りに落ちる意識。俺は遠くでメイジが部屋から出ていくのを感じながら意識を手放した。
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