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★僕の日常がゆっくりと壊れていく《兆し》がやってくるよ★

* * * 暫くすると、僕とバニラが通う学校が見えてきた。 空に向かって真っ直ぐ伸びる円柱形の白亜の校舎棟に、赤い三角屋根の先端から吹き出てくる真っ白な煙____。 あそこで僕ら生徒が食べる給食を作っているんだ。魚がメインで申し訳程度のお肉とパスタ(時々パン)という簡素なものだけれど、都会の学校で孤独なまま食べる少し豪華なメニューの給食よりも遥かにいい。 そんな校舎棟のてっぺんからモクモクと白煙を吹き出している給食ルームの方をボーッと見ていると、ふと何かを思い出しそうになって、すっかり釘付けになってしまう。 (何だっけ……こんな光景を____どこかで見たことがある気がする……そうだ、あの奇妙な夢の中だ……えっと、えっと……白ウサギが気にしてるお城を――って、お城?いやいや、お城じゃなくてその近くにある学校みたいに円柱形の建物から吹き出てくる……何か……いや、あれも煙なのかも……でも、どうして――) 「……い、おい……大丈夫か――ジンジャー?」 「え……っ____あ……っ…………!?」 ハッと我にかえった時には、クルスさんの顔が僕の真っ正面に迫っていて、咄嗟に後ろに退いてしまった。 そのせいでバランスを崩してしまった僕の手をクルスさんが掴んでグイッと引き寄せてくる。 クルスさんに抱き締められているような格好になってしまい、さすがに恥ずかしくなってしまった僕は彼から離れようと試みてみるものの大人に近しい彼と子供同然な僕とでは力の差が激しくなかなか叶わない。 それに、バニラは気付いていないだろうけれどクルスさんがコッソリと僕のお尻に手を伸ばして撫でているせいで恥ずかしさは増していくばかり____。 きっと、子供の僕が困っている様を見て楽しんでいるんだ。 ふと、そんな時だった。 「おい……っ……ジンジャーから離れろよ。この……変態野郎が!!」 「…………っ____!?」 周りの人々が振り返るくらいには大きな声で此方へと言い放ってきたのはクラスメイトであり、バニラと同じく僕の友達でもあるミントだった。 「嫌だな……ミント____オレはただジンジャーがバランスを崩して転びそうになってたから咄嗟に助けただけだよ。それじゃ、三人とも……頑張って勉強しろよ?」 一瞬、真顔になってミントをジロリと見つめたクルスさんはその後でパッといつも通りの様子に戻ってから僕らに言うと、これからパン屋の仕事に行くためか足早に去って行った。 リン、ゴーン____ リンゴーン____ 始業開始十分前を告げるチャイムが鳴り響き、慌てた僕ら三人は急いで校舎棟へと向かって駆けて行くのだった。

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