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★僕とバニラ★
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「む……無理してボクと……登校することないのに。ジ、ジンジャーは……義兄さんに頼まれてるから、仕方なくボクと一緒にいるんでしょ?いつ、ボクが周りに迷惑をかけるか分からないから…………」
今日のバニラは、いつもに増して弱々しい。
ミントと一緒に三人でいる時には、こんな弱音を吐いたりはしないけれど、僕と二人きりの時には心のうちに溜まっている負の感情を全てとはいかないだろうけれど、吐き出してくれる。
そんなバニラを見て、中には「鬱陶しい」とか「男らしくないわねえ」なんていう人々もいるけれど、僕はそうは思わない。
だって、そういった負の感情を吐き出してくれるのはバニラが僕を心の底から信じてくれてるって分かっているから。
そうはいってもミントのことも信じているって、いつだか言ってたけど、それはただ単に彼よりも僕に対しての方が言葉として出しやすいだけに過ぎないんだろうと思う。
「バニラは誤解してる……クルスさんに言われたからだとか、迷惑だからだとか、そんなの関係ないよ。僕が、その――バニラと一緒に学校に行きたいって思ってるから今ここにいるんだよ」
「そ……その言葉を……信じていいの?」
「もちろん!!」
むわっとした、魚の生臭さに包まれた風に吹かれながら、僕とバニラは満面の笑みを浮かべ合う。
すると、急に真面目な目付きになったバニラとバッチリ目が合ってしまい、何故だか気まずさを感じた僕は咄嗟に斜め横へと視線を逸らしてしまう。
ドッ、ドッと胸が早鐘のように脈打っているのが分かる。
「で、でも……それでもジンジャーは……義兄さんのことが好きなんでしょ?ボクよりも、ミントよりも義兄さんのことが____」
このままじゃ、埒があかない。
いつもに増して弱々しいバニラは普段よりも執念深くて、まるで蛇みたいに鋭い目付きで戸惑う僕を捕らえてくる。
どうしよう、どう言えば____今のバニラを落ち着かせることが出来るのか。
そんな風に思いながら、ふと目線をバニラの右腕の方へ移した時のことだ。
バニラの腕に、アザがあるのを見つけた。
でも、それはよくよく見なければ気付かないような小さめのものだ。
一瞬、その理由を聞いてみるのを戸惑いかけた僕だったけれど、ついさっきまでしていた気まずい問いかけから逃れるために咄嗟に事情を聞いてしまったんだ。
「ド、ドジだから、転んだだけ…………だから、そんなにボクのことを心配しなくてもいいよ。ミントも変な誤解するだろうし、それに____」
と、バニラが何かを言いかけた時のことだ。
「おいっ……バニラ――お前、俺が何を誤解するだって?別に誤解なんてしやしねえよ。まあさ、確かに俺はその__ジンジャーのことが友達じゃない意味で好きだけどよ、だからといってジンジャーが好きになった奴を非難したりなんかしねえ。きっぱりと運命として割りきるぜ。俺、どうにもならないことでウジウジするの大っ嫌いだからよ」
ミントの気持ちは、もちろん有難い。
けれども、それにしても周りにいる人々の数が多すぎたし何よりも彼の声が大きすぎた。
人々の視線が、まるで針みたいに此方へと注がれ途徹もない気まずさから、僕はミントとバニラよりも急ぎ足で学校へと向かって行くのだった。
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