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第一章・13

 何だこれは。  脳が滾りそうだ。  意識が薄い皮膜で包まれ、夢か現か解からない。    ただ、眼の前の白い首にかじりつき肌を擦り付けた。  温かな血の通うギルの喉笛をしゃぶり、鼻を鳴らした。  嘘だ。  ギル、俺を起こしてくれ。  これは夢だ。  夢?   夢ならそのまま身を任せてもよいのでは?  あまりにも蠱惑的な、ギルの白い体。  手のひらで撫でると、絹のようにきめ細かで吸い付くように馴染んでくる。  日に焼けて武骨なこの手には勿体ないほどの、清らかさ。 『媚薬ってぇのはさ、ヤりたいと思ってなきゃ効かねえもんさ。催眠術と同じでな、盛られてもその気がなけりゃあ、無駄ってこと』  以前、ニネットがしたり顔でそんな事を言っていたっけ。  では、俺は。  俺は、こうしたいと思っていたのか?   ギルと。  この幼い時から共に励まし合い、競い合い、高め合ってきた盟友と、淫らな行為に耽りたいと?

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