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第一章・20

 狡い。  そう、狡いのだ、こいつは。  幼い頃から、そうだった。  私が必死で努力してようやく手に入れるものを、難なくその手に掴み取る。  今もそうだ。  どうして私がルキアノスのために、奴を悦ばせるために必死で動かねばならないんだ? 「ルキアノス、交代だ」 「……え?」 「同じようにしろ、私に。今すぐにだ」 「ギル……」  呆けたような、ルキアノスの視線。  聖地中の人間の心を掴んで離さない凛々しい光はなく、ただうつろにギルの動きを追っている。  俊敏な動きはすっかり影をひそめ、ただ鈍重にベッドの上を這う。

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