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第一章・25

 恍惚とした表情のルキアノスが、見下ろしてくる。  どさり、と糸が切れたように、その大きな体がギルの上に乗ってきた。 「はッ、はッ、あぁ……ギ……ル……」  ルキアノスはしばらく荒い息を吐いていたが、やがて静かに眠りに落ちた。  最後まで、私と解かって抱いたのか。  意識を手放したルキアノスの体は、さらに重くなったように感じられた。  しかしこのまま二人で抱き合って、眠ってしまうわけにはいかない。  計画は、最後まで遂行するべきだ。  ギルはルキアノスの体の下から這いだすと、重だるい体に鞭打って後始末を始めた。    タオルを湿らせ、ルキアノスの体を丁寧に拭き清めた。  寝台のシーツも、新しいものと変えた。  部屋には香を焚き、生臭い性交の匂いを消し去った。    すべてが、夢の中での出来事。  ルキアノスにそう思わせるため、ギルは忙しく動き回った。

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