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第一章・26
「う……ん……?」
ルキアノスは、ゆっくりと眼を開けた。
ぼんやりとした意識のまま、周囲を見回す。
ここは……寝室?
俺の部屋ではない。
では、誰の。
一体俺は、今どこにいるのか。
寝返りを打つ。
だるくて、億劫だ。
セックスをした後の、無気力な感覚に似ている。
「……は!?」
俺は、何をした。
ギルを相手に、何を!
蒼白になった時、寝室のドアがかちりと開いた。
ギルだ。
相変わらず沈着な面持ちで、いや少し微笑を浮かべてやってくる。
「ようやくお目覚めか。全くよく効く薬だったことだ」
水の入ったグラスを手渡され、ルキアノスは一瞬ためらった後、一息で飲み干した。
「よく効いた、とは? どうなったんだ、俺は。何があった」
どうか、あれは夢だと言ってくれ。
ほとんど祈るような心地で、ルキアノスはギルを食い入るように見ていた。
幸いなことに、ギルの口からは望みどおりの返事が戻ってきた。
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