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第一章・27
「覚えてないのか? あの怪しげな薬を飲んだ後、君はぐうぐう寝入ってしまったんだぞ。寝室まで運ぶのに、大変だった」
「そうか……」
ルキアノスの顔に安堵の色が拡がる様子を、ギルは伺った。
これでいい。
あのひとときは、無かったことなんだ。
だが、君は忘れまい。
夢の中とはいえ、私と寝たことを。
同僚を色眼で見、淫夢に耽ったことを。
そして、しばしば思い出しては気まずさと羞恥に身をよじる事になるだろう。
私を見るたびに、浅ましく腰を振った己を軽蔑するだろう。
全く、痴態を晒してくれたものだ。
くくく、と喉で笑った。
聖地の清らかな神騎士に、決して拭う事の出来ない穢れを作ってやったのだ。
愉快でしかたがない。
だが、その嘲笑は自らにも向けられた。
まるで、愛し合っているかのような交わり方を。
互いに手を取り昇りつめてゆく快楽に、身を任せるような真似を。
私が君などを、愛しているはずがない。
そう思い込まねば、気まずさと羞恥に身をよじるのはギルも同じだった。
ルキアノスに組み敷かれ、はしたなく啼いた自分を軽蔑する予感は、ひたひたとその身を浸していた。
絶頂に達する時、ちらと頭をよぎった強烈な意識。
憎しみと表裏一体の、危うい感情。
愛おしい。殺してやりたいくらいに。
歪んだ愛憎の報いがギルの身に降りかかる日は、近い。
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