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第二章・2

「全く、このところどうかしている」  そうぼやきながら、精液で汚れてしまった股間を、ルキアノスはベッドに座り込んだままパジャマで拭った。  思春期でもあるまいに、頻繁に夢精するようになってしまった今日この頃。  独特の、牡の匂いが寝室中に漂っている。  ファンのスイッチを入れ換気をしながら、自分はそのままバスルームへ直行した。  浅ましいことにルキアノスの分身はまだ硬く勃ちあがったままだったので、湯ではなく冷たい水でシャワーを浴びた。  のぼせあがった心と体の熱が、引いてゆく。  ふと、夢の中で見た金色の眼が脳裏をよぎり、髪をぐしゃぐしゃとかき回した。 「まるで、子どもに返ったみたいだ」  わざと口に出して、自分で自分をからかってみる。  そう、幼いルキアノスの初恋の相手は、ギルだったのだ。  一目惚れだった。  その珍しい金色の眼を、人を超えた不思議な力……手を使わずに物を動かす、だとか……を持つ我が子に恐れをなした両親に、聖地へと連れて来られたギルに初めて会った時、ルキアノスの胸は激しくときめいた。  なんてきれいな子だろう。  その日は、興奮して寝付けなかった。  自分と同じく、神騎士となるらしい。  だったら、これからも時々会えるな。  つややかな黒髪、白い肌に澄んだ瞳。  ギルの肉親が薄気味悪がった金色の眼でさえ、ルキアノスにとっては神秘的で素敵だった。  ほどなくして、その初恋は告白する機会すらなく砕け散ったが。  ギルは、残念ながら男の子だったのだ。  しかし、とも思う。  幼い頃は、愛し合うのは男と女の一対でしかなかったが、成長し柔軟な考えを身につけた今では、同性同士の愛も認めている。  愛には、いろいろな形があるのだ。  現に、男同士、女同士で愛し合っている友人を持っている。  理解はできないが、認めることはできる。  それが、ルキアノスの同性愛に対する見方だった。  

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