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第二章・5
「準備ができました。トレーニングルームへどうぞ」
控室のスピーカーから、『彼』の声が聞こえてきた。
ルキアノスは、ギルの肩をポン、と叩き椅子から立つよう促し、肩を叩かれたギルはその動作に何か特別な意味があるのか考えようとしてやめた。
これからの時間、無駄な雑念は危険だ。
訓練とはいえ、それで不具になってしまったり命を落としたりすることも充分ありうるのだ。
騎士の修練は常に危険と隣り合わせで、それが神騎士に対するプログラムとなると非常に過酷だ。
二人は気を引き締めて、控室隣のトレーニングルームへ入った。
何もない、ただ白い壁に四方を囲まれた部屋。
出入り口は一か所で、窓一つない。
だがそこはやたら広く、5階建てビルに近い高さと面積を持っている。
その中央へ、ルキアノスとギルは進んだ。
「OK、そこで結構です。では、本日のプログラムの簡単な説明をいたします」
二人の目の前に、人影が浮かんできた。
目鼻、口のない、ただの木偶だ。
3D立体映像で投影されたこの木偶を相手に、今日はタッグを組んでの模擬戦をする。
「二人で息を合わせ、互いに協力しながらこのエネミーを片付けてください。人数は伏せさせていただきます。また、これはただの幻影ではなく」
人影が消え、代わりに彼らの目の高さに球体の核が浮かんでいる様が現れた。
「このように、コアを持ちます。コアからの攻撃は、200㎜Aの交流電流が主となります。お解かりの通り、これを1秒以上喰らいますと、AC4の症状、つまり心停止、呼吸停止、重度の火傷などのダメージを受けますのでご注意のほどを」
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