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第二章・7

 数を数えるいとまもない。  とにかく、かわしたと思えばすぐ目の前に現れるのだ。  そして、攻撃してくる。  気配を探ろうとしても、相手は機械だ。  オーラはもちろんのこと、息遣い、体温、その他一切の感覚がつかめない。  ギルは、と大きく間合いを取りながら彼の気配を探ってみる。  冷静だ。  変わらずブレぬ、彼の精神と集中力。  そのオーラが、針の先のごとく研ぎ澄まされた。  思わずルキアノスはそちらへと顔を向けていた。  戦闘中に脇見など、即、死に繋がるというのに。  眼に見えぬほどの速さで振り抜かれた拳。  それは確実にエネミーを捕らえていた。  虚空に掻き消える敵。  同時に、妙に澄んだ音が、ポーンと鳴り響いた。 「お見事です、ギル。一体撃破です」 『彼』の声が聞こえてくる。なるほど、クリティカルヒットすれば、こうして音で合図してくれるというわけか。  だが、親切でもなんでもない。どちらかといえば、手を叩いて囃す類の悪質な蛇足だ。

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