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第二章・13
「着替えたいな。更衣室へ連れて行ってくれないか」
ギルに肩を貸していた看護士が体勢を整えようとしたが、彼はやんわりと押しのけられた。
代わりに、ルキアノスの方へと腕を伸ばすギル。
「連れて行ってくれ」
「あぁ」
看護士からギルの体をそっと預かると、ルキアノスは更衣室へと歩き始めた。
まだ、足取りの鈍いギルの歩みを感じるたびに、慙愧の念が胸をえぐった。
「痛むか」
「大丈夫だ」
それきり、ギルは何も言わない。
油断し、下手を打った俺を怒っているだろうか。
軽蔑しているだろうか。
そんな思いだけをぐるぐると渦巻かせながら、ルキアノスはギルと共に更衣室へと入った。
「もういい。離してくれ」
ルキアノスは言われるまま、そっと彼の体から離れた。
ギルは思いのほか、しゃんと立っている。
常人なら死に至る可能性も高いほどの電流を受けたわりには、元気そうだ。
さすがは神騎士、といったところか。
「内臓も無事らしくてね。心配ない」
「良かった」
不覚にも、安心して涙が滲みそうになる。
そんなルキアノスを見て見ぬふりをし、ギルはくるりと彼に背中を向けた。
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