43 / 216
第二章・14
「汗をかいて、気持ちが悪いんだ。シャワーを使わせてもらうよ」
「いや、ちょっと待て」
いくらなんでも、火傷を負ってすぐのその体でシャワーはないだろう、とルキアノスは必死で止めた。
だが、ギルは笑って相手にしない。
「火傷で死にはしないが、自分の汗臭さで死にそうだ」
そう言って、さらさらと巻かれたばかりの包帯を解いてしまった。
あらわになったギルの上半身。
ルキアノスは、息を呑んだ。
その背中には、まるで稲妻が走った形のように枝分かれした赤い痕がある。
「……すまない」
そう言うのが、やっとだった。
だが、ギルはその振り絞るようなルキアノスの声にも、軽く片手を上げただけで、そのままシャワールームへ消えてゆく。
下を向いて動けなくなってしまったルキアノスの耳に、水の流れる音が聞こえてきた。
ぼんやりと、水音だけが耳に、頭に、心に沁みてゆく。
やがてルキアノスも服を脱ぎ、シャワールームへ入っていった。
ともだちにシェアしよう!