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第二章・14

「汗をかいて、気持ちが悪いんだ。シャワーを使わせてもらうよ」 「いや、ちょっと待て」  いくらなんでも、火傷を負ってすぐのその体でシャワーはないだろう、とルキアノスは必死で止めた。  だが、ギルは笑って相手にしない。 「火傷で死にはしないが、自分の汗臭さで死にそうだ」  そう言って、さらさらと巻かれたばかりの包帯を解いてしまった。  あらわになったギルの上半身。  ルキアノスは、息を呑んだ。  その背中には、まるで稲妻が走った形のように枝分かれした赤い痕がある。 「……すまない」  そう言うのが、やっとだった。  だが、ギルはその振り絞るようなルキアノスの声にも、軽く片手を上げただけで、そのままシャワールームへ消えてゆく。  下を向いて動けなくなってしまったルキアノスの耳に、水の流れる音が聞こえてきた。  ぼんやりと、水音だけが耳に、頭に、心に沁みてゆく。  やがてルキアノスも服を脱ぎ、シャワールームへ入っていった。 

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