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第二章・16
「すまない、ギル」
ルキアノスは、そう呟きながらギルの火傷の後にそっと唇を当てた。
初めは羽根が振れる程度の軽さであったが、次第に強く、深く押し付けるようにした。
唇だけではない。
やがては舌を伸ばし、丁寧に舐め始めたところで、ギルの声にならない声がかすかに漏れた。
「……っふ」
温かなオーラが、ルキアノスの口を通してもたらされてくるのを感じる。
ヒーリングだ。
ルキアノスは、私の傷を、治そうとしてくれているのだ。
ただ、それだけだ。
引き攣れたように疼く、熱い痛みがどんどん引いてゆく。
オーラだけではない。彼の思いも伝わってくる。
すまない、ギル。許してくれ。
それだけか、ルキアノス。
お前の気持ちは、それだけなのか?
ただそれだけの思いで、この私の肌を舐めまわしているのか?
やがて赤黒い火傷の痕は、瑞々しい桃色へと変化した。
皮膚の再生が始まったのだ。
これでもう大丈夫。
後は、自然に治ってゆくだろう。
ルキアノスは、そこで唇を離した。
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