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第二章・27
自室へ戻り、ルキアノスはもう一度シャワーを浴びなおした。
全身を、とくに性器を入念に洗った。
俺は、なんてことを。
取り返しのつかないことをしてしまった、とうなだれる。
強く出したシャワーの水圧が、容赦なく頭を叩く。
「すまない、ギル」
口に出して、言ってみる。
『それだけか?』
ギルの問いが、甦る。
「好きだ、ギル」
どうして、あの時そう言えなかったのか。
愛の言葉を囁きながら、情事に耽ることができなかったのか。
少年時代、あれほど胸をいっぱいにしていた想い。
どうしてそれを、この今に口にすることができなかったのか。
ただがむしゃらに、まるで獣のようにその体だけを貪った。
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