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第三章 告白

 週始めの礼拝。  法皇の間へ神騎士が集まり、ファタルに、法皇に、聖地に忠誠を誓う儀式が行われる。  たいして大がかりでもなく、複雑なものでもなく、どちらかといえば法皇が神騎士たちの様子を確認するための、顔合わせ的な役割を担っている。  そしてそれは、神騎士たちが互いのコンディションを把握するためのものでもあった。  ファタルへの祈りと、法皇の訓話、そして12名全員で声を揃えて誓いの言葉を暗唱する。  ものの30分もあれば、簡単に済む事だった。  幾度となく繰り返してきた、いつものことだった。  しかし今日、初めてその『いつものこと』に異常が見られた。  聖獣・タンの神騎士ルキアノスが不在なのだ。  まず全員が、彼は何かの任務で席をはずしているのだろう、と思った。  しかし法皇は皆のその考えを裏切り、ひどく信じがたい事を言ってきた。 「なお、ルキアノスはウイルス性の疾患で病欠をとっている」  軽く、小さな声が上がった。  まさか、あのルキアノスが。  心身ともに鍛え上げ、風邪ひとつひかないように日々自らを律してやまないあの彼が、病欠。  他人に感染しやすい性質の病気なので欠勤する、という事だ。  誰もが驚いたが、納得もした。  おそらく、今流行しているインフルエンザなのだろう。  皆心の中で合点し、自分も病に伏せないよう気を付けねば、とそこまでで思考を停止させた。  だが、それを越えた思いを抱いている男がひとり。    ルキアノス、本当に病欠なのだろうか。  ギルは、まだ痛みとだるさの残る身体を抱えて考えていた。  解散となり、それぞれが持ち場へ去ろうとするところへ、法皇がギルに声をかけてきた。 「体の具合はどうか。昨日、シミュレーションで怪我を負ったと聞いたが」  ありがとうございます、とギルは深々とこうべを垂れた。 「もう、すっかりよいのです。問題ございません。御心を煩わせたこと、深くお詫び申し上げます」  正直に言えば、体のある部位に痛みが残っている。  だがそれは訓練中に受けたものではなく、その後ルキアノスと交わったために疼く後膣の痛みなのだとは口が裂けても言えない事だ。 「無理はせぬようにな」 「ありがたきお言葉」  さらに深く一礼したギルを見ると、法皇はそのまま背中を向け神殿の奥へと歩んで行った。  彼の姿が見えなくなるまで、ギルは見送っていた。

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