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第三章・7
「3日間、飲まず食わずで寝て過ごしたのは本当なんだ。何もやる気が起きなくてね。ただ一つの事ばかり、必死になって考えてた。それは、ギル。君のことだ」
やはり、と思ったギルだったが、どうして、と答えた。
「どうしてだ? あの事を気にしているのなら、もう忘れてくれて結構だ。私は何とも思ってやしない」
今度は、ギルの方から駒を進めた。
あの事、とは。
それは、ルキアノスがギルを犯したことに他ならない。
自分の方から切り出し、軽く持ち運ぶことで、ギルはこの胃が痛くなるような場から逃れたかった。
ルキアノスが、自分で自分をどんどん暴いていくことをやめさせたかった。
「ホントに? ホントに、何とも思ってないのか。君だって、あんなに乱れたのに?」
ルキアノスは、少し微笑んだようだった。
切り口を変えて攻めてきたか。
ギルは、歯噛みする思いだった。
「三日間、考え抜いたよ。俺なりに。でも、どんなに捻くれて考えようとしても、結局行きつくところは同じなんだ。俺は、ギル。君の事を」
「私は!」
ルキアノスの言葉を遮るように、ギルはひとまわり大きな声をあげた。
「私は、人間だ。私だって、人の子だ。人並みに性欲もあれば欲情もする。君は巧かったよ、ルキアノス。私は、その場限りのセックスに溺れた。ただ、それだけだ」
君だって、そのはずだ、とギルは括った。
そう、ただ体が互いを求めただけだ。それ以上でも、それ以下でもない。
深く考えるのはよせ、ルキアノス。自分を勘ぐるんじゃあない。
しかし、ルキアノスはギルの否定をただ聞いただけで、途切れた言葉をそのまま続けてきた。
ただ真っ直ぐにギルを見つめ、そしてふと逸らしてぽつりと言った。
「俺は、ギル。君の事を愛してるんだよ、多分。いや、きっと」
今度はギルが、グラッパを一口飲んで喉を湿らせた。
カラカラに乾いてくる口を、やたら強い酒で潤した。
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