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第三章・13

「ギル、俺の事好きだよね?」 「ううッ!」  最後の最後、髪の毛一筋ほどの正気が、ギルを黙らせる。  ルキアノスはそれを見てとると、じっくりと今度は腰を退き始めた。  ギルの体内から、どんどん抜き始めた。  腕を泳がせ、必死で空を掻くギルが愛しい。  その手に自分の指を絡め、ルキアノスは再び彼の内へ進んでいった。 「挿入ったよ、全部」  体を交え、ルキアノスはギルの腹上で深く息を吐いた。  ギルの息とルキアノスの息も、ひとつに交わった。  ぐい、と勢いをつけて大きく退きぬき、すぐに腰を挿れた。  じゅぷッ。  粘っこい、卑猥な音が鳴った。  何度も、何度でもルキアノスはギルに腰をやった。  リズミカルに、まるで何かの舞踊のように。  ぐちゅッ。ぬぷッ。ぶじゅッ。  何だ、この音は。  妙な音だ。  だが、その音と共に運ばれてくる、この気が狂いそうな気持ち悦さは何だ。  冷めた頭でそう考えている、とギル自身はぼんやり思っていた。  だが、現実は。  実際にギルが今どんな状態にあるのかは、ルキアノスしか知らなかった。 「あぁッ! あッ、あッ、はあぁッ!」 「ギルッ……、ギル、俺の名前を呼んでくれ! 何か、話してくれ!」 「うあぁあ! あぐッ、あッ。はぁ、はぁ、あ、はぁッ!」  勢いよく、ギルから白い体液が飛んだ。達しても、まだその漲りは衰えない。  動くルキアノスの腹に擦られ、まだまだ力強く勃ちあがってくる。  ギル。  あぁ、ギル。  好きだ、ギル。愛してる。  ルキアノスは、ついにギルの内で弾けた。 「んッ、く。うぅううッ!」  歯を食いしばり、長く強く射精した。最後の最後まで、絞り尽くす勢いで吐き出した。  がくがくと震わせるギルの身体をしっかりと抱きしめ、その肌を密着させた。 「ルキ……ア……ノ、ス……」  ひときわ大きく跳ねると、ギルはぐったりと動かなくなった。  はッ、はッ、と獣じみた息を吐きながらも、ルキアノスの心は歓喜に震えていた。  名前を。  ようやく、俺の名前を呼んでくれた。

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