70 / 216
第三章・13
「ギル、俺の事好きだよね?」
「ううッ!」
最後の最後、髪の毛一筋ほどの正気が、ギルを黙らせる。
ルキアノスはそれを見てとると、じっくりと今度は腰を退き始めた。
ギルの体内から、どんどん抜き始めた。
腕を泳がせ、必死で空を掻くギルが愛しい。
その手に自分の指を絡め、ルキアノスは再び彼の内へ進んでいった。
「挿入ったよ、全部」
体を交え、ルキアノスはギルの腹上で深く息を吐いた。
ギルの息とルキアノスの息も、ひとつに交わった。
ぐい、と勢いをつけて大きく退きぬき、すぐに腰を挿れた。
じゅぷッ。
粘っこい、卑猥な音が鳴った。
何度も、何度でもルキアノスはギルに腰をやった。
リズミカルに、まるで何かの舞踊のように。
ぐちゅッ。ぬぷッ。ぶじゅッ。
何だ、この音は。
妙な音だ。
だが、その音と共に運ばれてくる、この気が狂いそうな気持ち悦さは何だ。
冷めた頭でそう考えている、とギル自身はぼんやり思っていた。
だが、現実は。
実際にギルが今どんな状態にあるのかは、ルキアノスしか知らなかった。
「あぁッ! あッ、あッ、はあぁッ!」
「ギルッ……、ギル、俺の名前を呼んでくれ! 何か、話してくれ!」
「うあぁあ! あぐッ、あッ。はぁ、はぁ、あ、はぁッ!」
勢いよく、ギルから白い体液が飛んだ。達しても、まだその漲りは衰えない。
動くルキアノスの腹に擦られ、まだまだ力強く勃ちあがってくる。
ギル。
あぁ、ギル。
好きだ、ギル。愛してる。
ルキアノスは、ついにギルの内で弾けた。
「んッ、く。うぅううッ!」
歯を食いしばり、長く強く射精した。最後の最後まで、絞り尽くす勢いで吐き出した。
がくがくと震わせるギルの身体をしっかりと抱きしめ、その肌を密着させた。
「ルキ……ア……ノ、ス……」
ひときわ大きく跳ねると、ギルはぐったりと動かなくなった。
はッ、はッ、と獣じみた息を吐きながらも、ルキアノスの心は歓喜に震えていた。
名前を。
ようやく、俺の名前を呼んでくれた。
ともだちにシェアしよう!