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第四章・3

 そぉんな、滅相もない。勿体ない、とさすがに慌てるニネットだったが、すでに法皇の掌からは癒しのオーラが注がれ始めていた。  添えた手に、もう片方の手もかざして送られてくる法皇のオーラは、とても温かだ。  だが同時に、強大過ぎるゆえの恐怖すら感じる。    自分は、法皇の掌の上からは絶対に逃れられないような。  逆らえば、その両掌でぱちんと叩かれ、哀れな小虫のように簡単に潰されてしまうようなイメージ。  すっかり大人しく黙ってしまったニネットに、法皇は独り言のように声をかけた。 「随分と深い傷だな、皮下組織にまで達している。肉芽組織で早急にふさぐか……。痕が残るが、よいか?」 「お任せしますよん」  傷の一つや二つ、今さら増えようが構いやしない、とニネットは考えていた。  過去に片目を失ったことも、何とも感じてはいなかった。    傷は、俺の証。  俺が、俺であることの証明。  いつか、そんな意味深な事をニネット様が話したっけ。  まだその真意は掴めないが、彼くらい実戦経験を積めば、私にもその気持ちが解かるようになるかもしれない。  彼より10年年下の、まだ10歳のバーラは、さらに13歳以上年長のギルやルキアノスと共に身を寄せ、法皇に治療を受けるニネットを見守っていた。

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