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第四章・5
聖地のメインセンターには、いくつかの『開かずの間』がある、とはそこに勤務する人間たちの間では有名な話だ。
ただ、そのエリアがなぜ常に封鎖されているのかを探ろうとする愚か者は、いなかった。
知ったが最後、命はない。
そんな極秘事項が隠されている、との想像くらいは容易につくからだ。
法皇が、二人の神騎士を伴い向かっているのは、その開かずの間のひとつだった。
生体技術部の事務所に器械室。実験室に検査室。そのまた奥の奥に、地下へと延びるエレベーターがある。
下へ下へ、さらにその下へ。
3人を乗せたエレベーターは、一般の職員は絶対に利用しないようなフロアへと降りてゆく。
そしてようやくエレベーターが止まり、外へと出たルキアノスとギルはそのフロアの壁や床、天井にまで描かれた画に、まずは驚いた。
極彩色の、渦巻きや波線。
法皇が先導する間、二人はその奇妙な画に眼を奪われていた。
原始的な文様が、次第に形を成してゆく。
それは人の姿をしていたり、動物や植物、乗り物や機械であったり。
さらに、教科書の挿絵で見たような、女神ファタルを中心とした宗教画となり、最後にたどりついた大きなドアに至る時には、抽象画で終わっていた。
周囲の抽象画から浮いた、無機質な重々しい扉。
鋼鉄性、いや、特殊合金か?
どちらにせよ、そう簡単には開きそうもない防盗金庫のような印象を二人は受けた。
右も左も分からず戸惑うルキアノスとギルを放っておいて、法皇はパネルに暗証番号を打ち込んでいる。
そしてカードキーを差し込むと、滑らせた。
正常な状態でのロック解除が緑色の光で示され、そこでようやく法皇は若者たちに声をかけた。
「ここから先で見るものを、決して口外してはならん。そして、ここで見る隠された事実を知ることに耐えられた人間が、次期法皇となる資格をまた一つ得るであろう」
それだけ言うと、法皇はルキアノスとギルを伴って入室した。
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