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第四章・7

「彼の名は、ニネットα という。そしてこれが」  法皇は、その隣のカプセル。そのまた隣のカプセルに手をかざしながら、ニネットβ に、ニネットγ 、と続けた。  3つのカプセルの中には、まるで三つ子のように三人のニネットがそれぞれ入っている。 「彼らは、ニネットに有事があった際の代替品として存在する。そしてそれは、他の神騎士も同じこと」  気味の悪い汗が、ルキアノスの背中に流れた。    つまり、俺にも。  ルキアノスというタンの神騎士にも、α・β・γ が存在するというのか!? 「今死なれてはまずい、という時に彼らを使うのだ。例えば、ルキアノス。お前が瀕死の重傷を負って、戦地から戻ったとする」  もしそのまま死ねば、味方の士気が落ち心理的に敗北する可能性がある、という際に、重症のルキアノスの代わりに彼を表に出すのだ、と法皇は淡々と説明する。 「瀕死のオリジナル・ルキアノスは、そのまま闇から闇へと葬り去る。ルキアノスが二人いては困るからな」  もちろん他にも用途はある。臓器移植やDNAの採取、など。 「お待ちください」    言葉を失ったルキアノスの代わりに口を開いたのは、ギルだった。  二人分の疑問を、法皇に問うた。 「ここにいる、ニネットα は。彼に、新しい傷が今まさに出来たのは、いったいなぜでございますか」  それは、聖地に赤ん坊が生まれた際に脳に埋めるマイクロチップの働きによるものだ、と法皇は涼しい顔で答えてきた。 「表向きは住民登録のためだが、真の目的はこのように用意された代替品にデータを送ることにある」  赤ん坊が1歳、2歳と成長するに従い、騎士になれる人材か、神騎士となる器かという観点で絞り込まれていく。  ただの一般民間人、もしくは騎士どまりでそれ以上の見込みがない人間には、チップは何の働きもしないまま終わる。  だが、神騎士ならば。  自軍の士気を左右するほどの将軍となるのなら、オリジナルの生体データはすべてこのカプセル内の影武者に送られる。  騎士なら、同じ守護獣を持つ者が何人もいるし、いくらでも補充できる。  しかし神騎士は、特別な兵士だ。  軍隊ヒエラルキーの頂点に立つ、一属一種の特殊な人間だ。  最終戦争の激闘中で簡単に、戦死しました、など許されないのだ。

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