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第四章・8
「ニネットが死にました。このままでは士気が落ち、戦況が不利になります、という時にこのクローンを使うのだが、なぜか左目がちゃんとあります、右腕の傷が無くなっております、ではおかしかろう」
だから、今現在のニネットの肉体的特徴を持たせるために、わざと傷をつけるのだ、と法皇は説明した。
まるで、医師のように。
ただ冷静に、当たり前のように法皇はルキアノスとギルに話し続けた。
しかし、と、からからに乾いた口でギルは再度訴えた。
「臓器移植にも利用する、とおっしゃいましたが。ニネットの眼は。彼の眼を、クローンから移植して元通りにはされなかったのですか? なぜ?」
それはな、と法皇は笑いを含ませ返答する。
いやここは、笑う場面ではないはずなのに。
笑って欲しくはないというのに。
「ニネット。聖獣・マーオの神騎士は、この代替品の存在に薄々勘付いておるのだよ」
あいつは確かに眼の前で死んだはずなのに、なぜこうして生きているのか、と疑っておってな、と法皇は笑いを噛み殺した。
「だから奴は、いくらその体に重症を負っても手術台には上がらない。勝手に全身麻酔を施され眠りこけている間に、影武者とすり替えられることを恐れておるのだ」
まるで気軽な法皇の口調だったが、ギルとルキアノスは軽い吐き気を感じた。
では、我らの中に。
現・神騎士の中に、すでにクローンと入れ替わっている人間がいる、と!?
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