88 / 216

第四章・16

「声を。声を聞かせてくれ、ギル」  ギルの腰から片手を離し、ルキアノスが突然髪をわし掴んだ。  ひッ、と無意識の音が喉を走った。髪を掴まれ顔を上げられ、上半身を大きく反らされ、ギルは縋るものを無くし生々しい声を上げるしかなかった。 「あぁ、ああッ、ぐぅ! や、やめッ。あッ、ぐ。うぅうう!」  そんな悲鳴にも、ルキアノスは痴れ者のようにうっとりとした声をだす。 「ギル。あぁ、ギル。やっぱり君は最高だよ。ギルは変わらない……」  君は俺が愛している、正真正銘のギルなんだとうわごとを呟きながら、さらに激しく突いてくる。  背を反らされたギルの腰とルキアノスの穿つ腰とが一層密着し、奥の奥まで突かれてくる。 「ッ、んんッ、あ! あ、はぁ、はッ。あッ、んあ、あぁ!」  ルキアノスから自然に漏れ出る体液が潤滑材の役目を果たし、ギルはようやく快感を覚えるようになっていた。  くち、くち、ぷちゅッ、とささやかな音ではあるが、それに誘われどんどん気持ちも体も昇りつめてゆく。  いや、私は初めから興奮してはいなかったか?  前戯を施されれば自然に後膣が開き、ルキアノスを受け入れる態勢が整う。  だが今は、まるで強姦のようにいきなり挿れられた。  それでも充分彼を招き入れ、その最奥まですっかり許しているのだ。 「あ、あぁ、あッ! ル、ルキア、ノスッ。もぅ、ダメ……だ。私、は。私はぁあ、ああぁッ!」  掴まれて、強く後ろに引かれた髪がたわむほどギルは首を仰け反らせた。  ダメだ。出るッ!  ソファを、床を汚してしまう、と咄嗟にやたら現実的な思いがギルの脳裏をよぎった。  しかしそこに、素早くルキアノスの掌が宛がわれてきた。 「あ、はぁ、あぁ。あ、あ、あ……」  ぐったりと、脱力しながらギルは果てた。  果てて満足したはずの体なのに、放たれた精液をたっぷりと使いながらルキアノスの掌で弄ばれると、はしたないことに再びギルのペニスは勃ち上がってくる。  手で嬲りながら、ルキアノスはギルの体に大きく重なり耳元で囁いた。 「ね、ギル。今度は俺に、してくれないか?」  君に抱かれたい、とルキアノスはそのままゆっくり床に寝た。  呆然と後ろを振り向くギルの目の前で仰向けに転がり、誘うように両手を広げてきた。

ともだちにシェアしよう!