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第四章・18
「ぅあッ! ああ、あぁあ!」
激しく引き擦られたルキアノスの内壁。
ギルはそれでも容赦なく、今度は音がたつほど激しく腰を叩きつけた。
ルキアノスとギル。
互いの肌がぶつかり合い、音が鳴る。
内からは、ギルの精液による濡れきった淫音がこぼれる。
責めるギルも、責められるルキアノスも、眼の眩むような悦楽に浸りきった。
腰をやりながらギルはルキアノスの名をただひたすらに訴え、ルキアノスは溶けただれた頭でそれに応えた。
「あ、あぁッ、う。いい、よ。ギル……。すご、く悦ぃ……」
はぁはぁと。
不規則な荒い呼吸でうわごとを言っていたルキアノスが、動き続けるギルの手首を掴んだ。
そうして、じわじわと自らの首へといざなっていった。
「首、を。俺の、首を、絞めてく、れッ!」
すでに正気を失っているギルは、乞われるまま彼の太い首に両手を回し締め始めた。
腰を穿ちながら、じりじりと力を込めていった。
「あッ! あぁ、ルキアノス……ッ。あぁ、はぁ、あぁ、うあぁ!」
首を締めればしめるほど、ルキアノスの後膣はきつく収縮した。
体内に呑み込んだギルを、喰いちぎらんばかりに締め上げてきた。
互いに締め上げ、殺しあうような交わりだった。
首を絞められながら、ルキアノスはいつかふと過ぎった死への憧憬を思い出していた。
ギルになら、殺されても構わないと思ったのか、俺は。
そんな事を考えた自分を思い出していた。
あの時は、不健全な思考だと無理やり胸から払いのけた。
だが今は。
今度は深く頷いた。
ギルの名を、声にならない声で呼びながら、想った。
俺が愛するのは、ギルだけだ。今まさに、ここで俺を殺そうとしているギルだけだ。
ギルはギルだ。
いくら同じ肉体、同じ遺伝子、同じ記憶を持っていたとしても、他のギルでは愛せない。
俺を愛することが許されるのも、ギルだけだ。
他の誰でもない、今ここに存在しているギルだけなんだ。
ギルを愛する資格があるのも、俺だけだ。
俺以外の、この俺以外のルキアノスがギルを愛するなど許せない。
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