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第四章・19
どく、ん、と下腹が波打ち、ギルとルキアノスは二人同時に昇り詰めていった。
寄せては返す波のように、何度でも昇り詰め、吐き出した。
「ッあ! あッ、はぁ、はぁ、あぁッ! あぁッ! あぁあああ!」
「もっと、あぁ、ギル。あ、ぅあ、あ! はぁ、あぁ、うあぁあ!」
互いの体を掻きむしり、皮膚を裂き、血を流しながら激しく深く愛し合った。
交わったまま放心し、気づいた時には汗と涙、唾液に精液、そして血液と、ありとあらゆる体液にまみれた体でふたり床に転がっていた。
ギルはテレポーテーションを使って、自室へ戻っていた。
有事の際以外は、極力使用してはいけないと禁じられてはいたが、この姿では致し方ない。
どろどろの体で、びりびりの服を纏って。
こんな格好で、ルキアノスと事後の始末をしたくはなかった。
思考も飛んで、どこかふわふわと上ずっていたので尚のこと独りになりたかった。
そのままシャワーを浴び、裂けたシャツや汚れた服はポリ袋へ入れてダストシュートへ放り込んだ。
ようやく人心地着いた時には、すでに夜明け間近。
静かな音楽でも聴いて、心を落ち着かせながら少しでも眠ろうとバスローブを引っかけたまま寝室へ入り、照明のパネルに併設しているオーディオをクラシックモードにした。
寝室が薄明るくなるとともに柔らかな音色が響いてきたが、奥のベッドに眼をやると心臓が止まりそうなほど驚いた。
人が腰かけている。
誰だ。
いや、それは誰だというより、知り過ぎている人物。
自分だった。
私自身が、なぜ眼の前に。
鏡でもなく、ホログラフィでもない。
それを証拠に、こちらに気づいたギルに対して、ぎこちなく手を挙げ立ち上がっている。
ドッペルゲンガーか、とさえ思った。
ドッペルゲンガーとは、自分自身の生き写しである。そして彼に出会ってしまうと近い将来命を落とす、との言い伝えがある。
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